株式会社資生堂（東京都中央区）は2日、緊張による心理的ストレスが加わることで特徴的なニオイが皮膚ガスとして放出される現象を発見し、その成分として2化合物を特定したと発表した。

併せて、このニオイに対して、強いニオイでマスキングするのではなく、ニオイを包み込んで目立たなくする独自の「STアンセンティッド技術」を開発した。

皮膚ガスは体調、加齢、情動、食事などを反映して変化する。皮膚ガスの中にはアセトンなどほぼ無臭のガスもあるが、ノネナールや食べた物に由来するニオイのガスもあり、本人や周囲がそのニオイを感じることがある。

同社は長年にわたり、調香師による香りの創出だけでなく、臭気判定士による体臭の研究を行ってきた。その中で、人が緊張によるストレス状態にあると硫黄化合物のような特有のニオイが発生することに気づいた。

この現象を科学的に確認するために、インタビューストレス試験を実施した結果、この特有のニオイの発生には再現性があることを確認した。

初対面のインタビュアーからの質問に20分間回答し続ける試験では、リラックスしている時と比べて、心拍数が増し交感神経が優位となり、さらにはストレスホルモンと言われるコルチゾールが唾液中で増加し、緊張によるストレス状態を生じる。

緊張によるストレスで発生するニオイ成分が何であるかを分析するため、インタビューストレスを受けた人の皮膚ガスを、中の空気を純窒素ガスに置換した専用の器具を用いて採取。採取した全ての人の皮膚ガスを臭気判定士が確認した結果、特有の「硫黄化合物系のニオイ」がすることを発見した。

さらに、このニオイの原因となる物質を特定するためGC/MS-ODPを用いて分析した結果、主要成分がジメチルトリスルフィド（dimethyl trisulfide、DMTS）とアリルメルカプタン（allyl mercaptan、AM）であることを見出し、この2成分を「STチオジメタン」と名付けた。