日本人にビフィズス菌が多いのは乳糖分解酵素の遺伝子型が関与

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2018.10.24

編集部

森永乳業株式会社(東京都港区)と株式会社DeNAライフサイエンス(東京都渋谷区)は、日本人にビフィズス菌が多い理由として、乳糖分解酵素の遺伝子型が関与している可能性を確認した。

研究では、会員参加型のゲノム研究プロジェクト「MYCODE Research(マイコード・リサーチ)」を通じ、健康な日本人の成人1068名(20歳~64歳)の腸内フローラ解析を行い、取得済みの遺伝子型のデータと併せて腸内細菌への遺伝子の影響について解析を行った。多くの遺伝子の中から、今回はビフィズス菌の割合に影響を与えていることが複数の研究で報告されている乳糖分解酵素の発現に関わる遺伝子座に着目し、試験結果に加え既報のデータも活用して、乳糖分解酵素の強弱に関わる6つの遺伝子座を調査した。

主に欧米人を対象とした研究で報告されてきたビフィズス菌の割合に影響を与える遺伝子座(rs4988235)の遺伝子型は、本研究対象者1068名および既報の146名を加えた1214名すべての日本人が成人で乳糖分解酵素の発現が少ないタイプの遺伝子型を持つことがわかった。

また、rs4988235以外の5つの遺伝子座についても日本人ではすべて発現が少ないタイプの遺伝子型であることがわかった。つまり、乳糖の分解・吸収は主に小腸で行われており、今回の研究結果から、日本人は小腸において乳糖の分解・吸収機能が弱く、乳糖が大腸に届きやすいことが予測される。

次に、この結果が日本人の特徴なのかを明らかにするために、既報のデータを活用して他の地域の人々との比較を実施した。その結果、乳糖分解酵素の発現が低い遺伝子型のみを保有する人種は、日本人を含む東アジア人のみであることがわかった。

つまり日本人は小腸における乳糖を分解する酵素が、欧米人ほど機能していないと推測され、乳製品などに含まれる乳糖は小腸で分解・吸収されにくいために大腸まで到達する可能性が高く、結果大腸に棲むビフィズス菌が増殖しやすい環境になっているのではないかと予測される。

ヒトの腸内フローラを形成している菌の種類や割合は異なっており、日本人でもビフィズス菌が多い人、少ない人が存在している。そのため、すべての日本人が同一の遺伝子型を保有していたという今回の結果は、日本人の腸内にビフィズス菌が多い理由の一部を説明できたに過ぎない。

しかしその一方で、食習慣とビフィズス菌割合の関係性を解析したところ、乳製品の摂取量とビフィズス菌の割合に正の相関が示されることがわかった。つまり、日本人は乳糖を含む乳製品を摂取することでビフィズス菌を腸内で増やすことができる確率が高いことを示唆している。

両社は、「MYCODE Research」を通じて、2016年より共同研究を実施している。今回研究の初めての成果として、日本人の腸内にビフィズス菌が多い理由のひとつが、小腸での乳糖の分解・吸収機能の弱さである可能性が示されたとしている。

参考リンク
森永乳業株式会社
株式会社DeNAライフサイエンス

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