経産省、介護ロボット導入に補助、実用化プロもスタート(下)
2014.01.29
編集部
2013年度から経産省が補助事業「ロボット介護機器開発・導入促進事業」に採択し介護ロボット実用化プロジェクト(移動支援、排泄支援など5分野)にも参加している企業各社の介護ロボット開発が進展している。
冨士機械製造株式会社(愛知県知立市)は、要介護者の胸部などを保持して抱え上げ動作を行い、移乗を介助する「移乗介助サポートロボット」(非装着型・写真)を開発している。保持部を多軸アームの先端に設け自然な動作軌跡を再現しながら要介護者の移乗の介助を行うことが出来る。
株式会社今仙技術研究所(岐阜県各務原市)は、身体能力が低下し、歩行支援が求められる高齢者を対象とした移動支援機器の開発に取り組んでいる。市販の歩行器では、困難な段差乗り越えや不整地通路での移動ができ、かごを備えて電動アシストで荷物の運搬もできる。様々なシチュエーションを考慮した転倒防止機能を備える。2015年9月メドに販売する方針。
一方、介護ロボット実用化プロジェクトに参加する企業や介護保険適用を受けた企業がいち早く市場に打って出るケースも見られる。
筑波大発ベンチャーで株式公開が視野に入っているサイバーダイン株式会社(茨城県つくば市)は、装着用ロボット「ハル」を実用化し、欧州市場で販売するためドイツに現地法人を設立、進出3年で労災適用を実現した。また、EU市場で医療機器を販売する上で欠かせないCEマーキング(欧州連合の消費者安全、健康、環境の要求事項に適合したマーキング)を取得するなど国際展開を先行している。国内においては、レンタル販売と代理店販売を行なっている。レンタル料は、単脚タイプ月額13万9000円、両脚タイプ18万8000円。別途、初期導入費用が必要。
厚労省の特定用具として介護保険対象機器(レンタル)に選定された自動排泄処理ロボット「マインレット爽(さわやか)」(写真)は、株式会社エヌウィック(宮城県仙台市)が開発した。排泄物を吸引し、洗浄水を加熱・送風する本体装置と排泄物を溜める衛生ユニットに分かれた構造になっている。介護が必要な方に紙おむつと同じ要領で専用カバーを装着し、排便・排尿した際、おむつ内のセンサーが感知して寝たままで排泄物の自動吸引と局部の洗浄・除湿ができる全自動の排泄処理ロボット。介護者は、衛生ユニット内の排泄物タンクに溜まった排泄物をトイレに捨てるだけで、排泄物への接触がないのが特徴。
この自動排泄処理ロボットは、大和ハウス工業が総販売代理店となって2013年1月から福祉機器のレンタル事業者などに販売を始めている。大和ハウス工業は、介護・医療施設などの施行実績を生かして2008年に専門部隊を設置してロボット分野に参入。現在では、排泄処理ロボットに加えてサイバーダイン開発の装着用ロボット(ロボットスーツ)や㈱知能システムが製造・販売するセラピー用アザラシ型ロボットなど他社が開発した福祉・介護ロボット製品を多数、販売している。
ともあれ、日本は、超高齢社会に突入し、65歳以上の高齢者が約2500万人にのぼる。その内、介護保険制度における要介護者または要支援者は、484万人に達し年々、増加傾向にある。そうした中、今年3月からは、介護施設への導入促進を図る狙いで、介護保険対象機器などを含めた補助事業(チーム公募)が始まる。しかし、産学官連携プロジェクトで標準化された低価格の介護ロボットが実用化されるのは、2015年度が目途。また、介護保険適用についても2015年度を目処に今年度から制度設計を始める。高齢者、痴呆者、介添者それぞれが満足する保険適用の介護ロボットを実用化し、需要増加に繋げられるか、今後の実機開発と市場創出が注目される。