化粧品各社アジア市場を攻略

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2013.03.19

編集部

中国市場に軸足を置いて事業展開してきた化粧品各社にとって尖閣の領土問題に伴う中国国内の暴動、日本製品の不買活動、中国の労働賃金の上昇などを要因に業績が悪化、中国市場戦略の抜本的見直しに迫られている。化粧品を含む日本企業の多くが中国に加えてもう一つの拠点「中国プラスワン」の思考として石油・天然ガスの産出で経済が急成長しているインドネシアやマレーシア、労働賃金が安く政情が安定してきたベトナム、ミヤンマーなどの新興国に新たな拠点を設立する動きが顕著になってきた。すでに高い経済成長を辿るアジア市場で日本の花王、世界最大の化粧品メーカー仏ロレアル、男性化粧品のトップマンダムが大衆化粧品分野で市場争奪戦を展開するなど早くも激しい攻防が始まっている。そこでアジアの自由貿易圏を形成する環太平洋戦略的経済連携協定(PPP)が進展する中で、花王傘下のカネボウ化粧品とロレアル、マンダム3社の中国を含むアジア市場を中心としたグローバリゼーション戦略に迫った。

カネボウ化粧品は、海外での売り上げ比率を2012年12月期の10%から2015年12月期までの3年間で30%に引き上げる。数値目標として2015年12月期売上高2200億円、売り上げ目標に占める海外事業の売り上げ規模を330憶円に持って行く。この売り上げ目標を達成するため同社は、高級ブランド「センサイ」を欧米市場に投入し、米仏独伊に設立した欧米現地法人(11社)を拠点に百貨店や高級化粧品専門店のルートを拡大して販売増加に繋げる。同時に、タイ、シンガポールに加え2011年8月に設立したマレーシア現地法人を拠点にアジア市場を攻略する。
中間層をターゲットに花王のファンデーションや乳液、化粧水とカネボウの口紅、マスカラ、アイシャドーをそれぞれ小型サイズにしてセット販売を強化する。また、中国市場に対しては、市場に投入している低価格品「ケイト」に加えて2011年から中国で現地生産を始めた新ブランド「アクアルナッシュ」と日本からの輸入品で美白ブランドの「ブランシ―ルスペリア」を中心に化粧品専門店やドラッグストアなど1000店舗を通じて拡販を図る。
同社の海外事業戦略は、花王の海外拠点(18ヵ国、51拠点)、物流網を活用し、相互にシナジー効果を発揮しながら欧米、アジア、中国の3極を軸に経済成長が見込める新興国での需要を取り込む作戦。同社の業績は、2012年12月期売上高1900億円、営業利益が花王に支払うロイヤリティーを除いて前期比30%増の約150億円と増益になった。2013年12月期は、償却負担が減少することや海外事業の強化を要因に100億円程度の増益となる見通し。

同社は、2006年に産業再生機構から4400 億円で花王が買い取り傘下とした。以来、花王の経営計画に沿って国内の構造改革を進め、一定のメドが付いたことから海外事業の拡大を図ることにした。花王にとって化粧品の収益拡大はカネボウの肩にかかっている。特に、プレステージ化粧品分野の収益改善が課題。2010年3月期にプレステージ化粧品の売り上げは、651億円、営業利益300億円の赤字。2012年12月期でもビューティアケア事業が前期並(4444億円)みの状態で収益の回復は鈍い。それだけに花王が強い基礎化粧品とカネボウの高級化粧品をベストミックスして相乗効果を発揮し、収益改善に繋げることが焦眉の急と言える。

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