ツムラ茨城工場などを報道陣に公開
2017.06.1
編集部
株式会社ツムラ(東京都港区)は5月31日、Kampo Academia企画のプレスツアーの一環で、報道陣に対して漢方記念館、茨城工場などを公開した。田村素子館長は「中国から輸入した原料生薬の品質を厳しくチェックした後、工場で最終製品に仕上げる」と品質管理の徹底ぶりを強調した。
茨城工場は、茨城県稲敷郡阿見町吉原3586に位置し、研究所・漢方記念館・薬草見本園などを併設している。全体面積が17万8000m2と東京ドーム3.8個分の広さに相当し、直近の工場の人員は455名、研究所は313名。漢方研究所においては、エビデンスの研究に注力しているという。
同社では、漢方製剤の原料となる生薬を中国から約80%、国内から約15%、ラオスなどから約5%調達している。中国から調達した原料生薬は100%子会社の深圳津村薬業有限公司に集められて選別加工。残留農薬、微生物、重金属などの検査を行い、同社が定めた品質基準をクリアした原料生薬だけが、石岡センター(茨城県石岡市)に送られ、さらに茨城工場や静岡工場(静岡県藤枝市)に運ばれる。医療用漢方製剤は、静岡工場で68品目、茨城工場で43品目(うち1品目は軟膏)を製造している。
報道陣に公開された生薬倉庫では、1800tもの生薬を保管。1室あたり20~30種類の生薬があり、1袋平均230kgの生薬が数段積み重ねられており、「10日で全て使い切る」(田村氏)という。倉庫内は温度15℃以下、湿度60%以下に設定されており、生薬成分の劣化防止、虫発生防止、カビ防止などを徹底している。
茨城工場では、原料生薬の切裁、秤量・調合、抽出分離、濃縮、乾燥という工程を経てエキス粉末に仕上げる。報道陣に公開されたセンターコントロールルーム(中央制御室)では、抽出分離、濃縮、乾燥の3工程×3ラインを24時間体制で監視。また、抽出分離に生まれた生薬残さについては、「火力発電の燃料などに再利用」(田村氏)しており、廃棄物の排出抑制に努めている。
漢方記念館は、創業115周年メモリアル事業のひとつとして、2008年に全面リニューアルオープンされた。1階は、玄関口で24種類の生薬の花を写真で紹介。中央の多目的ホールを中心に、その周辺を巡回できる形で、日本に現存する最古の医学書「医心方」のレプリカや傷寒論などの古典医学書をはじめ、漢方医学の歴史を紹介するパネルが展示されている。また、玄関正面の奥には、ガラスケースに収められた116種類の生薬見本が立ち並び、来館者の目を引く。
2階は漢方製剤の製造工程、品質管理、トレーサビリティなどの他、同社の創業時の姿や歴史を紹介するコーナー、薬研や百味箪笥など江戸時代の薬用具、原料生薬約50種類を実際に触ったり嗅いだりできる体験コーナーなどがある。また、医薬学生向けに、学校では機会が少ない漢方薬の調合も体験できる。
漢方記念館の裏手には約700坪の薬草見本園があり、「葛根湯」「六君子湯」「八味地黄丸」「小柴胡湯」など代表的な漢方薬の構成生薬がわかるように、各処方ごとに構成生薬を植える工夫が凝らされている。
2016年の医療用漢方製剤市場は薬価ベースで1481億円で、同社は84%と大きなシェアを占める。
- 参考リンク
- 株式会社ツムラ