【連載】大手化粧品会社の研究㊿京大・大阪市立大発ベンチャー、ナールスコーポの会社研究 ~細胞を活性化する化粧原料ナールスゲン開発・販売~(上)
2018.09.20
編集部
京都大学・大阪市立大学発ベンチャーの株式会社ナールスコーポレーション(京都府京都市、未公開)は、2012年3月に京大で研究されていた生体機能ペプチドの阻害物質の発見や大阪市立大でのヒト皮膚線維芽細胞内コラーゲン、エラスチンの産生発見がともに科学技術振興機構(JST)の最適支援事業(補助事業)に採択されたのを受けて法人化した。
法人化に伴い京大、大阪市立大から技術移転を受けて、2011年8月にエイジングケア化粧原料「ナールスゲン」とナールスゲン配合の化粧品開発の事業化に乗り出した。
化粧原料ナールスゲンは、コラーゲンなどをつくり出す機能が低下した静止状態の細胞に働きかけて細胞を活性化させることで、コラーゲンやエラスチンをよみがえらせる機能を持つ。 特に、身体内部で産生することが特徴で、細胞内でのコラーゲンの産生量が2~3倍に、肌の張りに必要不可欠な成分エラスチンの産生量も1.5倍以上に増加することを確認している。
ナールスゲンの特徴は、6つに集約することができる。
第1の特徴は、分子量が331ドルトンと極めて小さな水溶性成分であること。これは、肌に浸透しやすいというメリットに加えて化粧水などのローションタイプのエイジングケア化粧品の成分として使いやすいことが挙げられる。これによってナールスゲンは、表皮の角質層の奥まで浸透する。
第2の特徴は、真皮の線維芽細胞を活性化し、真皮のコラーゲン、エラスチン、自己回復たんぱく質「HSP47」を増やす。
皮膚の線維芽細胞を取り出し、ナールスゲンを添加する実験でナールスゲンには、コラ―ゲンを2倍以上、エラスチンを約5倍、HSP47を約3倍に増やすはたらきがあることが判明した。図にナールスゲン添加実験データを示す。
コラーゲンの発現量に関しては、ナールスゲン+ビタミンCを線維芽細胞に添加した実験では、ナールスゲンだけを添加した場合の約1.2倍、ビタミンCだけを添加した場合の約1.7倍多くなることが実証された。
肌の水分量を維持する働きについてヒトによるモニター試験では、ナールスゲンを含む化粧水を1~3カ月使用した結果、偽薬(プラセボ)に比べ肌弾力が大幅に向上し、角質水分量も増大するデータが得られた。
こうした実験結果は、ヒトの実験でないため、ナールスゲンのヒトでの効果を保証するものではない。しかしながら、ナールスゲンのエイジングケア化粧品成分としての期待を示すデータであることは間違いない。