【連載】化粧特許と知的財産権③MTG、投資事業に新規参入、美容企業等に投資(下)

2019.05.24

特集

編集部

模倣品対策に苦慮する中でMTGは、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)会社「MTG Ventures」(100%出資子会社)を設立(2018年9月)し、新たに投資事業に参入した。美容や健康など自社の事業分野とシナジーを生む可能性のあるベンチャー企業に対して投資を行う。また、CVCファンドは、事業会社の自己資金で組成され、運営は子会社MTG Venturesが行う。

同社の投資戦略は、事業面で強みとするブランド開発力及びグローバルな販路等を投資先スタートアップ企業に提供することで、投資先の事業拡大を加速させる。と同時に、投資活動によってMTGグループを中心に得意とする領域の技術やノウハウ、知見等を持ち寄って事業を発展させていく「ビジネスエコシステム」を構築し、新ビジネスを大きくするビジネス戦略を展開する。
MTGがCVCファンドをやる特異性は「モノがつくれる」、「ブランドが創れる」、「販路がある」ことが特徴で、これが事業の強みともなっている。

こうした強みをスタートアップ企業に提供することで、投資先企業の成長促進につなげ、美容と健康に特化した日本No.1のベンチャーキャピタルを目指す。
投資枠は、50億円。うち新規投資で40億円、1社あたりの投資金額は1億円~2億円前後を想定。約30社程度の美容・健康ベンチャーに投資する方針。
また、投資事業とは別に、インキュベーション(起業化)施設やスタートアップ塾の開設、小学生への起業家教育等を実施することで、名古屋初のベンチャーエコシステムを構築し、地域の発展に繋げる。

ここへMTG Ventureは、投資案件の中から2019年1月に第1号投資案件として「食」の世界展開を目指す「株式会社MiL」(ミル、東京都渋谷区)に投資を行った。出資額は非公開。
しかし、投資事業に進出したとはいえ、株式市場で同社の株価が下落するなど低迷状態にある。株価低迷は、2019年9月期(2018年10月~2019年9月)業績見通しの大幅な下方修正が原因だ。
2019年9月期の業績見通しについて同社は、下方修正し売上高を700億円から500億円へ大幅に引き下げるとともに、営業利益を98億円から10億円、最終利益は63億円から620円とほぼ10分の1に落ち込むと予想。これが株価低迷に繋がった。また、美容機器の模倣品流入でコストプッシュに見舞われ,美容機器の販売減と合わせて業績が落ち込んだ。

美容機器の販売減の背景にあるのは、新たに始まった中国の電子商取引法(新EC法)。中国外で購入した商品の転売が規制の対象となった結果、「爆買い」の一因とも言われていた中国人による転売目的の商品購入に急ブレーキがかかった。
美容機器の売上高の約40%は中国人インバウンドが占めており、新EC法の影響でインバウンド需要が減少したことも売り上げ不振に影響した。

ともあれ、同社が今後、より成長を辿るためには、模倣品に対する知的財産権の行使、投資事業による新たな収益確保が羨望される。

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