【連載】化粧特許と知的財産権⑤福光屋、米醗酵に美容成分等が含まれていることを発見(上)

2019.05.29

特集

編集部

老舗酒蔵会社「福光屋」(石川県金沢市)の創業は、1625年。金沢市で最も古い歴史を数える。しかし、中高年男性を主要なターゲットとしてきた清酒市場は、徐々に陰りを見せ始め、消費量の減少に直面している状況にある。
そのような中、「伝統は革新の連続」を社是に掲げる同社は、1990 年代初頭より細々と続けていた「健康美事業部」を基盤に、2002 年頃より発酵に関する本格的な研究開発を開始した。特に、米醗酵を新しく美容の観点でとらえて研究を開始。米と水を原料に微生物の働きと醗酵の力で生み出される日本酒、その源である米醗酵には、美容成分をはじめエイジングケア成分にいたるまで多くの有用成分が含まれていることを発見した。
そこから抽出した代表的有用成分としてアルコール分を含まない醗酵が生み出す天然の美容液・コメ発酵液「FRS」と米発酵エキス「FRE」の開発に成功、コメ発酵液、米発酵エキスの化粧品原料の製造方法について特許を取得し、独占的に事業化することを実現した。

化粧品原料の製造方法は、天然保湿因子(NMF)の主成分である天然のアミノ酸を豊富に含んだ保湿効果の高い化粧品原料の製造方法に関するものである。
本発明は、天然のアミノ酸を豊富に含んでいるばかりでなくアルコール独特の香りや刺激を抑えて人体に対して安全な化粧品原料の製造方法を具現化したもの。
アミノ酸は、生体適合性の高さや環境負荷の低さなど様々な特長を持ち、これらの特長を利用して化粧品分野にも幅広く応用され、特にスキンケアの効果が期待されている。 また、科学的に保湿性が皮膚の健やかさや潤いのある肌を保つ重要素であり、この保湿性に最も寄与しているのがアミノ酸であることが、明らかにされてきた。

しかし、消費者の安全に対する要求が高まり、敏感肌と感じる消費者が年々増加傾向にある中にあって製造工程や安全性が消費者にとって不明瞭で、不透明な部分が多いため、安全で天然のアミノ酸を豊富に含んだ化粧品原料の供給が急務とされてきた。
一方、日本人の主食である米は、安全性の高さが証明されており、その米を主原料とした天然アミノ酸の化粧品原料は、数多く開発されている。しかし、従来技術を含めて微生物の発酵という過程を経ているにもかかわらず、ノンアルコールで天然保湿因子(NMF)の主成分である天然のアミノ酸を豊富に含んだ化粧品原料の製造方法を確立したものはない状況にあった。 また、従来の技術においては、乳酸菌や酵母を使用することで、日本酒と同様な独特の香りが生じてしまうという問題があった。

本発明は、化粧品原料の安全性が問題となっている点やアルコールの刺激に弱い敏感肌の消費者が増加している点等に配慮してこれらの問題点を解消し、人体に対して安全で、香りが気にならず、更に保湿効果の高い天然のアミノ酸を豊富に含んだ化粧品原料の製造方法を提供することを目的としたもの。

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