【連載】化粧特許と知的財産権⑤福光屋、コメ発酵液を使った化粧品開発、知財の活用図る(下)

2019.05.31

特集

編集部

国が推進する産業クラスターは、地域の中堅中小企業・ベンチャー企業が大学、研究機関等のシーズや技術等を活用して新事業が次々と生み出されるような事業環境を整備することで、広域的な産業集積を形成することを狙いとした施策。

同社は、中部経済産業局が進めていた産業クラスター計画を受けて設立されたNPO法人北陸ライフケアクラスター研究会へ参画。クラスター活動を通じ北陸先端大学、 金沢大学との産学官連携により化粧品原料のコメ発酵液「FRS」や米発酵エキス「FRE」を配合したアルコール分を含まない自然派化粧品「アミノリセ」を開発(2004年)し、化粧品事業に本格進出した。
いわば、化粧品原料の特許取得のみならず、特許に裏付けられた技術を化粧品の開発に応用して事業化を成し遂げ、新たな収益を生み出す知的財産の活用を図った。

「アミノリセ」は、酵母や乳酸菌などの働きと醗酵によって米の美容成分を抽出し、日本酒の3倍、20種類以上のアミノ酸を含むノンアルコールの醗酵コスメ。
現在、アミノリセは、エッセンス、クレンジングミルク、ソープなど10種類を商品化し、市場に投入している。また、最新スキンケアシリーズ「スッピンイズム」も商品化している。
「スッピンイズム」は、ベーシックなスキンケアアイテム。醗酵由来のアミノ酸、有機酸、醗酵代謝物などの天然美容成分を配合した自然派基礎化粧品。現在、洗顔フォーム、ローション、乳液など6種類を商品化し市場に投入している。

ここへきて研究開発部門の強化が注目される。従来は、醸造の専門集団だったが、化学、電気、システム、バイオといった多様なバックグラウンドを有する理系の大学・大学院卒の人材を採用し、多彩なアイディアが生まれる学際的な研究環境を確立した。
現在、機能性のレベルを保湿以外の美白、抗酸化などに拡大、よりオーガニックな方向へ研究を進めている。

同社は、これまでの「酒蔵」から「米発酵会社」として大きく日本酒事業、化粧品事業、機能性食品事業の3つの柱をもとに事業展開している。
化粧品の販売チャネルは現在、通販市場中心に展開しているが東京、金沢に開設した直営店4店舗でも販売している。現段階で、化粧品事業がどの程度の水準にあるか、未知数だ。
清酒業界は右肩下がりの業界で最盛期には、50億円近くあった売り上げが、現在は半分近くに落ち込んでいる
それだけに、化粧品事業に懸ける期待は大きい。 今後、化粧品ブランドの展開や技術の特許化、知財活用の推進によって化粧品事業をどの程度まで成長路線に乗せることができるか、注目される。

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