化粧品ECの現状と課題⑤化粧品ECの現状と課題 ~ファンケル、オムニチャンネルを構築しEC推進~(上)
2019.12.12
編集部
キリンホールディングス株式会社(東京都中野区)が筆頭株主の株式会社ファンケル(神奈川県横浜市)は、ネット基盤を刷新してユーザーとの接点となる店舗とシステムを連携・統合した「オムニチャンネル」を確立し、電子商取引(eコマース)を推進している。
顧客情報をウェブと店舗のシステムを連携・統合したオムニチャンネルの構築は、IT基盤再構築の一大プロジェクト「ファンケル インフォメーション テクノロジー」(FIT)と呼ばれる。
FITプロジェクトは、2014年からIT基盤の再構築に取り組み、2016年3月に顧客情報管理システムと通販システムを刷新したのをはじめ、2018年4月に店舗システムの刷新、同年7月に通販サイト「ファンケルオンライン」をリニューアル化するなど4年の歳月をかけて完成させた。店舗とウェブを連動させた取り組みは、化粧品通販では珍しいケース。
オンラインのリニューアル化は、これまで、ウェブと店舗で異なるクーポンを発行していたものを同じクーポンを発行できるようにした。また、通販サイトでの購入だけでなく店舗での買い物履歴を含めた購入履歴を過去2年間にさかのぼって確認でき津新機能を追加した。さらに、PCとスマートフォンのデザインを一新し、ナビゲーションメニューや商品・購入ページなどユーザーの使い勝手を向上させるとともに、ウェブ上でお得な情報を増やすなど会員に寄り添ったサイトに刷新を図った。
顧客情報をウェブと店舗で統合したオムニチャネルの取り組みにより、店舗とウェブ、電話窓口といった各販売チャネルの会員情報、カウンセリング情報、顧客情報がリアルタイムに共有できるようになった。
一方、ユーザーにとってもウェブと店舗のどちらで購入しても同じレベルでサービスが受けられるようになった。また、重量がある商品を購入する際は、ウェブで購入し、化粧品の使用感やカラー等を確認した場合、店舗で体験してから購入するなど店舗とウェブとの使い分けが容易になりユーザーの利便性が向上した。
同社のオムニチャネルの確立は、販売チャネルが統合され、どの販路からもユーザーは、スムーズに購入ができるようになったことが大きい。 例えば、商品Aを店舗に買いに行ったときに、在庫がなかったためにECで検索し、購入することはマルチチャネルの範囲内だ。そこから、さらに、ECで検索した商品の支払いを店舗で済ませ、受け取りは自宅で行えるようになるのがオムニチャネルといえる。
ともあれ、同社は、店舗とウェブサイトで、会員情報や在庫情報、物流までも統合して顧客サービスを可能にしたオムニチャネルの構築でEC推進に繋げている。