【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目②人工皮膚開発に多業種の企業が参入(上)

2020.01.27

特集

編集部

人工皮膚に関する研究開発は、化粧品会社に加えてパナソニック株式会社(大阪府門真市)やグンゼ株式会社(大阪府大阪市)、ベンチャー企業など多業種の企業が参入し、白熱の様相を呈している。
花王株式会社(東京都中央区)と並んで化粧用人工皮膚分野に参入した株式会社資生堂(東京都中央区)は、アメリカ地域本社で、連結子会社の「シセイドウ アメリカズ コーポレーション」を通じて米ベンチャーのオリボ社を買収し、同社が開発した人工皮膚「セカンドスキン」(特許技術)を活用して新しいカテゴリーの化粧品開発に取り組んでいる。

現在、シセイドウ アメリカズにオリボ社の研究チームが移籍してスキンケアや日焼け止め等の開発に取り組んでいる。資生堂では「エイジングケア化粧品は、全世界にニーズがあり、グローバル展開を目指す方針」と開発に期待を込める。
同社がオリボ社を買収したのはM&A(合併・買収)を通じて次世代型化粧品につながる要素技術を取り込み新カテゴリーの化粧品を開発するのが狙い。買収価格は不明だが数十億円規模とみられる。

オリボ社が開発した人工皮膚は、ポリマーを物理・化学的性質に変える架橋ポリマーフィルム技術を応用して実用化した。
人工皮膚の特徴は、ポリマーベースのクリームの上に専用の乳液を重ねて塗ると人工皮膚が形成され、肌の凹凸を補正して気になる「しわ」や「たるみ」を隠すことができる。
同社は「世界で勝てるグローバルビューティーカンパニー」を目標に掲げて新たな美容事業に賭ける期待は大きい。

美容家電に力を入れるパナソニックは、肌に貼ってメイクができ合わせて顔のシミやそばかすなどを隠せる厚さ100ナノメートル(ナノは10億分の1)の極薄シート「メイクアップシート」(写真)を開発した。
デジタルカメラで培った画像処理技術などを応用して開発したメイクアップシートは、特製のシートをプリントアウトし肌に貼ることでメイクができる。センサを内蔵した鏡「スノービューティミラー」で、顔データを分析し、シミの場所を解析すると肌色に合わせた極薄のオリジナルシートが印刷される仕組み。貼るときもはがすときも水でぬらすだけという手軽さで、貼っていることを気づかれずに頬のシミをほぼ完全に隠すことが出来る。シートの印刷には、有機材料を塗布して有機ELテレビなどのパネルを作る独自技術を活用した。

メイクアップシートは、技術戦略部事業創出推進課が中心になって開発した。AI、IoT、ビッグデータ等を活用した新たなビジネスにチャレンジしていく中で「ユーザー一人一人のニーズにマッチするよう進化した家電をコンセプトにテーラーメイドビューティを目指して開発した」という。

化粧品会社と提携しパートナーシップを進めながら2020年中にも全国の百貨店等で販売する計画。

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