【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目②人工皮膚、化粧・医療用の棲み分けなくなる(下)

2020.01.28

特集

編集部

グンゼと京都大学は、共同で機能性人工皮膚「ペルナック Gプラス」を開発した。医療機器として製造承認(2018年)され、保険での治療が受けられるようになった。人工皮膚の素材は、コラーゲンスポンジ(アルカリ処理ゼラチン含有)と補強フィルムからなる二層性のコラーゲン。特殊な線維芽細胞増殖因子を含ませることで、疑似真皮を作り、熱傷や糖尿病などで壊死した皮膚の再生が図れる。2018年4月に国から製造承認を受け、医療用の人工皮膚として2019年1月から全国販売を始めている。保険適用で原則3割が自己負担。

ペルナック Gプラスは、ブタの皮膚や腱由来のゼラチンとコラーゲンを混ぜたシート。血管の成長を促すたんぱく質を含んだ液を使用前に散布する。患部に貼り付けるとタンパク質が1週間ほどかけて少しずつ患部に作用し、血流を再開、活発化させて皮膚修復を促進する。
京都大学の鈴木茂彦名誉教授(形成外科)や関西医科大学の森本尚樹准教授(同)らのグループが感染症を引き起こすリスクがあった従来品を改良し、グンゼと共同開発した。

グンゼは、アパレルなどの既存3事業と並ぶ4本目の柱としてメディカル事業を育成する。2018年度の売上高でアパレル事業が5割以上を占める中、プラスチックフィルム分野や電子部品分野など5分野からなる機能ソリューション事業が約4割にまで拡大している。中でも、同事業内に設けたメディカル分野は「衣料から医療へ」をコンセプトに成長事業として羽ばたこうとしている。

理化学研究所認定のベンチャー「株式会社オーガンテクノロジーズ」(東京都港区)は、化粧品や医薬部外品の研究開発を支援する人工皮膚モデル「アドバンスドスキン」を開発した。
表皮4層、真皮2層の人皮膚組織構造を再現し化粧品の安全性や有効性等の機能解析に用いることで、的確に製品の特長を打ち出すことができる。
同社は、現在、皮膚機能を包括的に再現しうる革新的な三次元ヒト人工皮膚モデルの開発を行っている。
将来的に、この革新的な三次元ヒト人工皮膚モデルを目的とする顧客ニーズに合わせて、人種や性別、病態など様々な評価モデルをカスタマイズすることを実現する方針。
これらの開発により様々な製品開発ニーズに応え、一層の高度化・高品質化された製品開発のサポートを実現し、ヘルスケアや健康に大きく貢献する。
富士フィルムの子会社ジャパンテッシュエンジニアリング(J-TEC)は、人工皮膚に正常な皮膚から増殖能力の優れた細胞を取り出して培養し、皮膚のようにシート状にしたものを受傷部位に移植する「培養表皮移植」を開発、ビジネスに拍車をかけている。
ともあれ、健康な肌ときれいな肌が同義語になりつつある現代、長らく「美容」を研究してきた化粧品メーカーが「治療」という医療分野の研究に乗り出し始めた。また、治療目的に開発された製品を化粧品として活用する事例も増える。
皮膚分野に異業種の企業がこぞって参入し、美容から治療へ、治療から美容へ。肌研究の境界線や棲み分けがなくなりつつある。

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