【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目③DDS技術、中小化粧品各社等に拡大(下)
2020.01.31
編集部
ドラッグデリバリーシステム(DDS)技術は、薬物の効果を最大限に発揮させるため体内胴体に制御する技術・システムのこと。超微粒子(ナノカプセル)の内部に美容成分等を閉じ込めて皮膚の角質層、真皮層にまで届けて効能・効果を高めるDDS技術の開発がこれまでの大手化粧品メーカーから中小化粧人メーカーに広がってきた。
エステサロン用化粧品メーカーの株式会社フェース(大阪府大阪市)は、肌に塗っただけでは浸透しない生コラーゲン(三重らせん構造を保ったままのコラーゲン)とゼラチンコラーゲン(生コラーゲの三重らせん構造がほどけた状態のコラーゲン)及び加水分解コラーゲン(ゼラチンコラーゲンをさらに分解したコラーゲン)をナノカプセル(肌の中にあるリン酸皮質と類似の成分)に巻きつけることによって角質層に浸透させるナノカプセル技術(DDS技術)を開発した。
三重らせん構造の生コラーゲンの鮮度を維持するため、フリーズドライの状態で保存。使用前に、付属のウォーターで溶解して使用する。三重らせん構造の生コラーゲンは、加水分解コラーゲンの約600倍の高い保水力を兼ね備えている。
同社は、角質層への浸透に優れた生コラーゲン製剤の製法特許、製剤・配合特許を2015年2月に取得するとともに同年6月に「フェースゼラチンコラーゲン」の特許を取得した。以降、同社は、特許に根差したナノカプセル技術による肌の弾力、針が実現する施術を「ラメら美容法」として普及促進を図っている。
株式会社キレートジャパン(東京都新宿区)は、防腐剤不使用の化粧品製造が可能となる「フリーズドライ(凍結真空乾燥)」技術と浸透率を高めるカプセル化技術「ナノソーム」を開発した。
新しいカプセル化技術「ナノソーム」によりFGF(線維芽細胞増殖因子)やEGF(表皮細胞増殖因子)といった不安定な成分も安定させ、近年、一般化しつつあるカプセル化技術「リポソーム」よりも高い浸透力を実現した。肌なじみが良く、浸透力も高いため素早く浸透し、角質層に留まる。
DDSは、京都大学再生医療研究所 田端教授が発明・特許化したDDSの基礎テクノロジーを利用し、化粧品へと応用開発・製品化に繋げた。ハイドロゲルとは、ゼラチンを特殊加工したもので、医療分野においても薬の徐放に使用されるなど安全性が認められた物質。このハイドロゲルにグロースファクターのような生理活性物質を加えると分子間の相互作用により安定化し、さらに徐々に放出(徐放)させることができる。
バイオ・創薬ベンチャーもDDS技術を開発し化粧品開発に応用している。ナノエッグは、薬剤の成分を必要な部位に効果的に作用させるDDSの技術を武器に、スキンケア化粧品の開発に乗り出して成功。将来的に医薬品分野への本格的な進出を狙う。
創薬ベンチャーのナノキャリア株式会社(千葉県柏市)は、ナノ粒子で内包した薬物の血中徐放性を高め、確実に標的抗原へと送達させるDDS「ミセル化ナノ粒子技術」を開発し、同技術を使った化粧品開発をコーセーの子会社株式会社アルビオン(東京都中央区)などと共同開発している。