【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目⑥細胞と抗齢化、肌細胞活性のコスメ開発(下)

2020.02.19

特集

編集部

ロート製薬株式会社(大阪府大阪市)は、脂肪由来間葉系幹細胞の皮膚での働きについて研究を行う中で、幹細胞の遊走(移動)を促進し、幹細胞自体を増殖させる素材(成分)「ステムSコンプレックス」を開発した。

ステムSコンプレックスは、カプロオイルテトラペプチドー3、トリペプチドー1銅、コラーゲンの3種類の素材を組み合わせた新成分。特徴は、脂肪由来幹細胞の移動を促進して増殖。同時に、加齢で弱ったコラーゲン線維を増強する作用がある。
同社は、ステムSコンプレックスが脂肪由来間葉系幹細胞の遊走を促進することを試験で実証した。
試験は、ボイデンチャンバーの上部に脂肪由来間葉系幹細胞を播種、下部ウェルにステムSコンプレックスを添加し、20時間培養した後、メンブレン下部に移動した細胞数を測定した。また、脂肪由来間葉系幹細胞の増殖を促進することで、よりコラーゲン生成等の効果を得られることも明らかにした。
これにより、ステムSコンプレックスが脂肪由来幹細胞の遊走及び増殖を促進することで、より肌でのコラーゲン生成が増強されることを裏付けた。

同社は、再生医療研究での過程から得られた知見を応用し、独自開発の「ステムSコンプレックス」を配合してエイジングケア化粧品を商品化し市場投入している。幹細胞研究から肌細胞を活性化したコスメの商品化に先鞭をつけたものとして注目される。

細胞に焦点を当てた研究に取り組むのは、ファンケル株式会社(神奈川県横浜市)や株式会社キレートジャパン(東京都新宿区)、バイオベンチャーの株式会社リプロセル(神奈川県横浜市)なども力を入れて取り組んでいる。

株式会社コーセー(東京都中央区)は、IPS細胞を用いた老化研究に取り組む。同一人物の皮膚細胞からIPS細胞を作り老化の物差しとして知られるテロメアの長さを比較した。その結果、すべての年齢のテロメア長が回復していることを確認した。ただ、老化の重要な指標のひとつテロメアの長さは回復したことは明らかになったが、全ての細胞が若返ったかはまだ検証が必要。
老化の指標としてよく知られるのが、細胞の染色体の両端にあるテロメア構造。このテロメアは、細胞分裂を繰り返すと短くなるのが特徴なことから細胞の寿命を表すことに例えられる。この研究によって老化の過程のメカニズム解明につながる。

同社は今後、個人から採取した細胞をIPS細胞」にして皮膚そのものを再現する技術を進めていく方針。同時に、IPS細胞を化粧品やサプリメントの開発に応用する研究も本格的に取り組む。
皮膚細胞から作ったIPS細胞を動物や人体での治験に代わって活用し、肌トラブルの少ない化粧品の開発につなげたい意向。皮膚が老化する過程を再現し、老化を抑えるのに効果的な化粧品やサプリメントの開発に繋げる。

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