【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目⑩リコピンのナノ化技術、抗酸化成分とリコピン共存を実現(下)
2020.03.17
編集部
富士フイルムがリコピンのナノ化技術を実現したのは、写真フィルム技術で培ったナノ化基盤技術に追うところが大きい。
肌の角層と写真フィルムの厚さは、ほぼ同じ。しかし、写真を美しく仕上げるためには、極薄の写真フィルムの中で決められた場所に微粒子を安定的に届ける技術が必要となる。
写真フィルムは、厚さ約20マイクロメートル(0.02ミリメートル)の間に様々な役割を持った粒子をその役割を発揮すべき場所に適切に配置する高度な「ナノ化技術」が必要だ。
例えばセラミドは、肌のバリア機能を高める成分だが、水にも油にも溶けにくく、肌へ浸透させることが難しい成分と考えられていた。
そこで同社は、化粧品分野でない他業種で培った、ナノ化技術を応用することで、ナノ化したヒト型セラミドの開発に成功した。また、スキンケアブランド「アスタリフト」の成分である天然由来の抗酸化成分「アスタキサンチン」は、美容と健康のパワーを秘めた成分だが、安定に配合することが非常に難しい成分と指摘されてきた。
同社は、アスタキサンチンのナノ化にチャレンジし、写真フィルムで培ったナノ化技術をベースに、高い抗酸化能を有する「アスタキサンチン」とリコピンを共存させるなど、さまざまな有用成分を独自技術で安定的にナノ化し、浸透を高めることに成功。アスタキサンチンの抗酸化能の持続性を向上させることができることを見出した。
ナノ化する大きなメリットの理由は、成分の性能を保ったままサイズを極小できること。成分が凝集したままの大きなかたまりの状態では、肌(角層)の奥まで届かない成分も、小さくすることで浸透させることを実現した。
同社がリコピンのナノ化を研究した背景には、紫外線や環境ダメージによって発生する活性酸素の影響を抑制する抗酸化成分の中でもリコピンは、高い抗酸化能を有することで知られている。しかし、分解しやすい不安定な物質であり、結晶性が高いこともあって安定的にナノ化することが困難でこれまで実現されなかった。
そこで同社は、リコピンの高い抗酸化能に着目し、リコピンを安定的にナノ化するための技術開発に取り組んだもの。
同社は、リコピンのナノ化を契機に今後、ナノリコピンを用いて紫外線や環境ダメージによる老化を防ぐエイジングケア化粧品の開発に力を入れていく方針。