【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目⑫シリコーンゲル、増粘、固化の新ゲル化剤開発(下)

2020.03.24

特集

編集部

シリコーンを増粘、固化した新しいゲル化剤が開発されている。シリコーンのゲル化を開発したのは株式会社資生堂(東京都中央区)で、超分子技術(水素結合や配位結合など比較的弱い結合で結びついた分子集合体)を応用して実現した。
これまでシリコーンは粘度を出したり固めたりすることが難しかった。同社は、シリコーンの透明ゲル化に成功、新しい基材や使用感触の化粧品開発を可能とした。

同社がシリコーンゲル化剤を開発したのは、シリコーンそのものを増粘するのは難しいため、通常、乳化剤の添加や他の油への溶解といった方法で安定配合していた。
特に、これまでは、シリコーンを透明で安定なゲル(ジエル)状に固める素材は、ほとんど知られていないこともあり、これが開発できれば化粧品として応用が一気に広がるとの期待が大きかった。
シリコーンゲル化剤の開発にあたって同社は、超分子に着目した。これまでにない機能を発現することに期待したことに他ならない。

同社は、超分子の概念に基づきシリコーンに配合した際、超高分子となりゲル化能力を発現する素材の開発をめざした。
そのための方法としてゲル化能力の高い成分を探索した結果、約20種類に上る天然アミノ酸のうち化学物質「パリン」「イソロイシュ」に優れた能力があることを見出した。また、アミノ酸誘導体である「アスパルテーム」(アスパラギンサンとフェ二ルアラニンの複合体で人工甘味料として使用)をそれぞれシリコーンの一種である「ジメチルシロキサン」と組み合わせることで、3種類のゲル化剤の開発を実現した。

開発したシリコーンゲル化剤は、シリコーンに対しわずか1~2%程度加えて加熱、冷却の過程を経ることで超分子構造をした1本の繊維状となる。さらに超分子構造が網目状に広がりシリコーンの流動性を奪うことで、透明なゲルが得られる。
こうしたゲル化剤の開発によって新しい使用感職の化粧品開発が可能となった点で評価されよう。

一方、ここへきて油剤としてジメチルポリシロキサンのゲル化剤も開発されている。ジメチルポリシロキサンは, 油っぽさやべたつきがなく軽いのび, 高い撥水性などの特長を有する油剤である。しかし、これまでジメチルポリシロキサンのゲル化剤は数が少なく,化粧品に安定的に配合することは困難であった。
そこで, ジメチルポリシロキサン中で膨潤してソフトゲルを形成するポリシロキサン三次元架橋体を開発。また, これらの架橋体に化学的修飾を行うことで, ジメチルポリシロキサン以外の油剤である炭化水素油, エステル油, グリセライド油に対してのゲル化剤やW/O型ゲルエマルションをつくることを実現している。

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