【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目⑯毛髪再生移植、自分の細胞を移植し髪の毛を再生(上)

2020.04.15

特集

編集部

自分の髪の毛の細胞を培養し、頭皮に移植して毛髪を再生する毛髪再生移植が脱毛症や薄毛を解消する治療法として期待が高まっている。
毛髪再生移植は、脱毛症や薄毛に悩む人の頭皮組織から採取した毛球部毛根鞘細胞(毛髪の成長に重要な役割をする毛乳頭細胞の元になる細胞)を培養した後、脱毛部位に移植(注入)することで、脱毛部位の毛包を再活性化し、脱毛部位の毛髪を成長させるもの。
現在、薄毛で悩む人は、国内で1千万人を超えると見込まれている。

円形脱毛症の原因については、髪の毛の毛根組織に対して免疫機能の異常が発生する「自己 免疫疾患」を原因とする説が有力。
「自己免疫疾患」は、外部からの侵入物を攻撃することで自分の体を守る免疫系機能に異常が生じ、自分の体の一部分を異物とみなして攻撃する病気。
円形脱毛症は、Tリンパ球が毛根を異物と間違えて攻撃してしまうために発症すると考えられており、その激しい攻撃で、毛根が傷み元気な髪の毛でさえ突然抜け落ちてしまう。しかし、なぜその様な異常が生じるのか、詳細は明らかになっていない。

こうした薄毛や脱毛の治療については、外用の育毛・発毛剤や男性ホルモン抑制効果がある経口治療薬等が使われている。
脱毛剤の外用薬としてミノキシジルと経口薬のフサステリド等が使用されている。いずれも臨床試験で壮年脱毛症に対する有効性と安全性が確認されているが、すべての患者に有効ではない。
しかも、女性では、用量に制限があるなど経口治療薬は、適用できないなどの問題を抱えている。

毛髪再生医療は、体外で細胞を培養できるため、たったの数十本で済むことが利点。また、「女性でも男性と同様に治療可能」な点。
男性に比べると薄毛に悩む女性の数は少ない。しかし薄毛の女性が少ない分、薄毛になってしまった時の社会的・精神的ダメージは男性とは比較にならないほど大きい。男女問わず可能な毛髪再生医療は、女性の薄毛治療を改善する可能性を秘める。

現在、脱毛症や薄毛関連市場は、植毛やかつら、育毛サポート、育毛料(医薬品、医薬部外品)など国内だけでも約2000億円の市場規模と推定される。
こうした状況下、自分の細胞を移植して髪の毛を再生する毛髪再生治療法の実用化は、脱毛症やはげに苦しむ1千万人に上る患者の生活の質向上(QOL)に繋がる。それだけに、実用化に対する期待は大きい。

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