【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目㉓毛髪成分・素材開発(中) ~葛根から育毛素材開発、ストレートスタイリング成分開発~

2020.06.2

特集

編集部

安全な新規育毛材探索を目指して研究に取り組む株式会社毛髪クリニックリーブ21(大阪府大阪市)は、これまでの研究で、葛花(かっか)の有効な育毛成分「5α−リダクターゼ」が阻害作用(育毛作用)のあることを見出した。

葛花は、マメ科のクズの花を基原とする漢薬であり、古くから二日酔いの予防・緩和に用いられてきた。その乾燥根は、葛根(かっこん)と称され、風邪引きに汎用される葛根湯に配剤されている。
5α−リダクターゼは、男性ホルモン(テストステロン)と結び付き、5α−ジヒドロテストステロン(DHT)に変換する還元酵素。5α−ジヒドロテストステロン(DHT)は、毛周期(ヘアサイクル)に異常を引き起こし、脱毛を誘発する原因となる。

同社は、男性型脱毛の原因である5α−リダクターゼの阻害作用が期待される生薬・漢方に着目し、探索を行なったことが新規育毛素材探索の契機となった。
研究は、女性ホルモン作用を有する生薬・漢方を対象にスクリーニングを行い、更に男性ホルモン(テストステロン)を処置したマウスにおいて毛成長障害の抑制効果を確認。同時に、生薬に含まれる有効成分の探索を行なった。
結果は、クズの花を基原とする葛花50%エタノール抽出エキスに強い5α−リダクターゼ阻害作用が認められ、更にマウスを用いた試験において毛成長障害を抑制させる作用も認められた

こうした成果について同社は、「テストステロン5α−リダクターゼ阻害剤」として特許出願した。さらに同社は、開発した有効成分を今後の商品開発に応用するとともに毛髪のメカニムを解明し、脱毛の解決を目指して研究開発に取り組んでいる。

株式会社資生堂(東京都中央区)は、ストレートヘアを革新する新素材「ストレートスタイリング」成分を開発した。 ストレートスタイリングは「高いストレートスタイリング効果」と「さらさら感触」を合わせ持った新ヘアスタイリングポリマー。
開発を具現化するために、ポリマーの分子設計を進め、硬さ(高いストレートスタイリング効果)に関与する親水性の構成成分と、伸び(さらさら感触)に関与する疎水性の構成成分がブロック状に存在しているブロックポリマーとした。さらに、ポリマーの皮膜を薄く均一にするため、ポリマーの合成技術を持っている目標を満足する「ストレートスタイリング成分」の開発を進めた。
その結果、新開発の成分は、これまでのスタイリングポリマーが疎水性の構成成分と親水性の構成成分が主にランダムな配列だったのに対し、それぞれをブロック化したうえで架橋した特徴のある構造とした。

この皮膜は、硬い親水性ブロックの中に伸びる疎水性ブロックが点在するスポンジのような構造をしているため「硬くて伸びる」性質で、しかも「薄く均一になる」ため、二律背反であった「高いストレートスタイリング効果」と「さらさら感触」の両立を実現した。

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