【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目㉔女性心理と化粧品開発(上) ~カネボウ、脳科学を応用して女性心理を分析・商品開発へ~

2020.06.8

特集

編集部

「自分の肌を健康に維持したい」「少しでも美しく在りたい」という心理は、いわば女性の本能であり、今も昔も変わることはない。しかし、それを実現する道筋、手段が個々によって変わってきている。
大手メーカーの化粧品に信頼を寄せ、その化粧品に価値を認める人もいれば、自然素材を活したオーガニックな化粧品に信頼を置く人もいる。独自の美容理論をベースにした化粧品に好かれる人もいれば、高い効果効能を持つ製品を追い求める人もいる。
このように美しくあるために化粧品を選ぶ基準が人それぞれで違ってきている。自分らしい美しさ、快適さ、若々しさなどを求める志向は同じでも、選ぶ製品や使い方は人それぞれである。幸福の価値観が多様化すれば、化粧品に対する価値基準が多様化するのはごく自然な流れといえる。

女性の価値観が多様化し、自分なりの幸福を実現するために化粧品を選び、化粧という行為を繰り広げるようになっている。そんな実態や心理を深く知ることが、化粧品の作り手に求められているといっても過言ではない。

ここ数年、女性たちの化粧をする心理は、大きな変化を遂げた。バブル経済が崩壊し長引くデフレ経済の中で、女性は自分なりに若く美しくいられる術を知り、それを実践している。女性の生き方のスタンスが化粧品を選んでいるといってよい。
その意味で、女性の心理にあわせた化粧品作りが作り手の化粧品メーカーに要望されている。
女性心理と化粧品開発の取り組みを検証した。

株式会社カネボウ化粧品(東京都中央区)は、化粧が女性心理にどのような本質的な価値をもたらすかを脳レベルで理解することで、価値ある化粧品作りにつなげている。
同社は、女性心理と化粧品について「化粧は女性が他人との関係性を作りたい欲求と関係している」「化粧は女性自身にとっての喜び(報酬)につながっている」という2つの仮説をたて、20代から30代前半の女性17人を被験者として実験を行った。

実験では、1つ目の仮説「女性にとって化粧は他人との関係を重視したい」ことについて、自分の化粧した顔を見た時は、脳の反応が他人の顔を見た時に似ていることが分かった。

2つ目の仮説「化粧する喜びに繋がっている」ことについては、「自分の素顔を見た時、脳内の報酬系と呼ばれる部位が活発になることを観測した」として、脳は自分の化粧した顔を他人と認識するとともに、自分の化粧顔が他人との社会的な関係を築く橋渡しの役割を果たしている」と推論づけた。
特に、化粧をする前に自分の素顔を見た時、化粧した後の自分の姿が他人や社会に認められることを想像して意欲が沸くことを示唆していると結論づけた。

こうした脳科学を応用した実験から同社は、引き続き、女性の価値観を脳科学のレベルで深く知るための実験を続け「女性が求める商品を世に出せる努力を続けていきたい」と説く。

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