【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目㉕制汗剤開発(下)~国内制汗剤市場約400億円、パウダースプレー主力に~

2020.06.17

特集

編集部

加齢臭を意識する人が増えている。株式会社資生堂(東京都中央区)が20~50代のビジネスパーソン2400名を対象に行った調査で、7割以上の人が「他人の加齢臭を感じたことがある」という結果が明らかになった。
同社は、1999年に加齢にともなって発生するニオイの原因物質「ノネナール」を発見。今では一般的に使われている「加齢臭」という名前も同社が命名した。

ノネナールは、年を重ねると増加するパルミトオレイン酸(脂肪酸)が過酸化脂質や皮膚常在菌によって酸化・分解されることで発生する。ノネナールは、男女問わず40歳を過ぎたころから増えてくる。特に、女性にとって皮脂量が増える暑い季節は、要注意といえる。
加齢臭は、頭部や首の後ろや耳のまわり、胸もと、脇、背中などから発生する。「枕のニオイが気になる」という声が聞かれるのも頭部からノネナールの分泌量が多いことによる。
ネナールの発生を抑えるために、皮脂や汗をこまめにケアして清潔に保つことが対策のポイントとなる。

同社は、汗が臭うメカニズムについても研究している。
人間の身体には、汗を出す汗腺が2種類あり、1つは「エクリン腺」というほぼ全身にある汗腺。エクリン腺から出る汗の成分の99%は水。したがって、体内から出たばかりの汗はほとんど無臭。しかし、汗をかくと嫌なニオイがする。その原因は、汗の中に含まれる尿素や乳酸といった微量成分や皮脂、垢が菌によって分解されることによってニオイが発生することによる。
もう1つの汗腺は「アポクリン腺」といい、脇の下に多く分布している。アポクリン腺から出る汗も本来はほぼ無臭だが、汗の出る開口部が毛根などと一緒になっているため、汗の中に細胞の一部が混ざり、「アポクリン腺」から分泌される汗は複雑な成分になる。また脂肪やタンパク質、鉄分などを多く含んだ汗のため、汗が菌によって分解される時に、より独特な強いニオイが発生しやすくなる。脇汗が特に臭うのは、このような理由による。

花王株式会社(東京都中央区)は、ニオイの原因物質の特定や発生するメカニズムの探索、解決方法などの研究に取り組んでいる。
研究の成果として衣類の汗臭に関し、汗や衣類に付着した汚れ成分を特定の菌が分解することで生成され、複数の短・中鎖脂肪酸のニオイであることを見出した。
こうした微生物に関する研究と洗剤の開発を進めることで、汗臭を生み出す菌の制御技術を新たに開発し、衣料用洗剤に応用した。

株式会社ミルボン(東京都中央区)は、加齢に伴う女性の頭皮臭の研究に取り組む。女性の頭皮臭研究で20代から40代では頭皮臭の不快度が右肩上がりで上昇することを解明。また、ニオイ成分「ノネナール」だけでなく、それ以外の成分もニオイに大きくかかわっていることを突き止めた。

経済産業省の調査では、制汗剤の国内市場規模は、2010年度から2018年度までの8年間の平均市場規模は、約400億円で推移。中でもパウダースプレイタイプが全体の約6割強を占める。
今後、新型コロナウイルスの影響で市場規模も世界規模で縮小が予想される。

#

↑