【連載】この中小化粧品会社に注目⑳ファンペップ(下)~ペプチド配合のシャンプー、除菌スプレー等開発・販売~

2020.10.27

特集

編集部

ファンペップは、研究テーマの特性上、はじめに目標を決めてそこへ最適化していくというアプローチがとれない。このため、研究過程で生じたペプチドの配列や特性にあわせて長い時間をかけて医薬品へ展開していくか、比較的短期の売上が見込める化粧品やヘルスケア分野で事業化していくか、を適宜判断しながら創薬事業と化粧品事業の2つの軸で事業展開している。中でも、製薬企業や化粧品企業等とのパートナリングを行い、特許や技術のライセンス許与を行うことが事業の中心となっている。

第2の事業と位置付けている化粧品事業について同社は、化粧品の開発当初、社員全員が製薬業界の出身のため、ノウハウがなくライセンス供与に苦戦した。しかし、知的財産にたけた人材を採用するなどしてブランド(商標)や使用感などトータルでの価値を供与先に訴求するなどしてライセンスの安定供給に繋げた。また、化粧品会社、ヘルスケア企業等とのパートナリングにより、現在では、ライセンス契約料、ロイヤリティ収入を安定獲得するようになっている。

こうした同社のビジネスモデルに沿って化粧品分野で、株式会社ファンケル(神奈川県横浜市)と2016年6月から化粧品に配合する機能性ペプチドの共同開発を進めることで合意。その成果としてファンケルから2018年3月に機能性ペプチド配合の「マイルドクレンジング シャンプー」が販売された。ファンケルに続いて電子タバコやノベルティグッズ等のメーカー「株式会社SMV JAPAN」(東京都港区)は、機能性ペプチドを配合したアルコール除菌スプレーを商品化し、市場投入(2020年5月)した。

ところで同社は、2019年12月20日に東証マザーズ市場での新規上場を予定していたものの上場申請を取り下げた。
上場申請取下げの理由について同社は「内部統制や法令順守など社内でトラブルがあったのではなく、バイオベンチャーに対するマザーズ市場の状況が悪く資金調達が十分できそうになかった」と説明する。「コロナ禍の影響で株価が低く十分な株価収益が期待できない」との判断による。
上場延期は、同社に投資してきたベンチャーキャピタルや個人資産家等の出鼻をくじいた格好。
同社は「開発パイプラインの臨床的意義や社会的貢献度も含めて会社の知名度が足りなかった。今後、知名度の向上にも尽力し、さらなるパイプラインの進捗を図って企業の価値を高めるなどできるだけ早い時期に上場を目指す考え」と説く。

同社は、上場を延期した2020年8月に第三者割当増資を行い、SBIインベストメントや新生キャピタルパートナーズなど5社のベンチャーキャピタルから総額約15億円の資金調達を実現した。

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