【連載】この中小化粧品会社に注目(63)高級アルコール工業(上) ~VCから投資、将来上場も視野に~

2021.06.8

特集

編集部

化粧品の原料として広くアルコールが使われている。化粧品で一般的にアルコールといわれているのは「エチルアルコール」と呼ばれるもの。成分表示では「エタノール」と記載される。
エタノールは無色透明の揮発性の液体で、さまざまな成分を溶かす作用に優れているため、化粧品に成分配合されている。

アルコールには、分子中の炭素数が少なく無色の液体を低級アルコールと呼ぶ一方、主に油脂から精製され、炭素数が6以上のものを高級アルコールと呼んでいる。炭素数12以上のものは、常温で固体となり、乳化物の安定剤として洗剤等に使われる。

こうした高級アルコールや化粧品用に付加価値を高めた製品を製造しているのが高級アルコール工業株式会社(千葉県成田市)である。
同社の歴史は1952年に設立された太陽石鹼に始まる。当時、日本では捕鯨が盛んで、鯨油から高級アルコールを精製していたが、82年に商業捕鯨が停止されたため、原料はパーム油など植物由来のものに転換した。
同社は、この転換期に合わせて「エステル製造」に取り組み、機械制御で高レベルの品質管理を実現する技術開発型企業へと大きく舵をきった。
現在は、技術開発型企業としてエステル化合物を中心とした新規化合物開発や化合物の精製分析技術、製品の応用処方技術を持ち、乳化剤や化粧品基材、毛髪化粧料などの特許を保有する。

同社は、国際有機認証機関であるECOCERTから毎年ナチュラル・オーガニックの認証を受けており、オーガニックコスメの統一基準であるCOSMOSの取得にも取り組んでいる。また、フランス、韓国にも進出するなどグローバル展開を行う一方、EUの化学品規制「REACH」規制への対応などにも早い段階から取り組むなど自主性を発揮してきた。
機能性原料については、主観的になりがちな感触表現を客観的な数値や画像で表現し、製品の差別化を図っていることも特異性がみられる。

同社が公表している年商は、2019年11月期で52憶円、社員数98名に上る。ベンチャーキャピタル(VC)の中小投資育成から投資を受けており将来、株式公開も視野に入れている。

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