【連載】台頭する創薬・再生医療ベンチャー【5】 テラ、中期的に10%の継続成長目指す

2013.10.24

特集

編集部

テラ株式会社(東京都千代田区)は、医療機関に樹状細胞ワクチン療法の技術、運用ノウハウなどを供与するがんワクチン療法のバイオベンチャー企業(2004年6月設立、東証ジャスダック上場)。細胞治療技術開発事業と細胞治療支援事業の2事業を主力に事業を展開し、中期的に10%の継続成長目指す。

今期(2013年12月期)の業績は、細胞治療技術開発事業で、新たに北里大学北里研究所病院(提携医療機関)や八九十会高尾病院(基盤提携医療機関)の2医療機関と契約を締結。加えて年度内に1医療機関と契約して合わせて3医療機関と新規契約すること。また、細胞治療支援事業も第3四半期以降、順調に推移していることなどから売上高前期比11.2%増の17億1千万円となる見通し。利益面では、研究開発費が1億円程度、増加すること。また、医療機関で、樹状細胞ワクチン療法の論文を発表するための支援を拡充し、認知拡大に向けた科学的根拠(エビデンス)の強化を目的とした新業務統合管理システムの導入計画や中国、東南アジア進出(契約締結に向けて協議中)をにらんだ準備費用など先行投資の負担などで営業利益同29.9%減の1億5千万円、当期純利益同29.9%減の1億円となる見込み。

同社が事業展開する樹状細胞ワクチン療法は、樹状細胞(免疫細胞)にがんの特徴(がん抗原)を認識させて樹状細胞を培養し、患者の体内に戻してリンパ球にがん抗原を覚えさせることで、がん細胞のみを攻撃する。また、リンパ球が体内で長期間、がん抗原を認識し続けるため、持続的にがんを抑制することが可能。

樹状細胞ワクチン療法の契約医療機関は、2004年6月に会社を設立して以降、2012年12月時点で、契約医療機関29機関、症例数(累計)約6,300症例にのぼる。今年6月末時点での症例数(累計)は約7,000症例に達した。さらに、2013年12月期時点で契約医療機関は、32機関、累計症例数7,800症例に増えると予想される。

培養風景_かとうクリニック同社は、中期的取り組みとして既存事業の細胞治療技術開発事業などの継続拡大に加えて旭化成と自動培養装置を共同開発し、培養自動化することによる生産性の向上や九州大学と樹状細胞ワクチンの細胞医薬品開発に向けた取り組みを始めている。

旭化成との自動培養装置の共同開発は、旭化成の医療ノウハウや細胞加工技術と同社の人の免疫力を生かした免疫細胞ワクチン細胞培養ノウハウを組み合わせて開発する。細胞を安定、効率的に培養できる装置の早期、実用化を目指す。

九州大学との樹状細胞ワクチンの細胞医薬品開発については、すでに同大学と共同開発した大量増幅培養技術(特許出願中)を用いた樹状細胞ワクチンの治験薬に準拠した細胞医薬品製造のためのフィージビリティスタディ(予備試験)に着手している。

共同開発した大量増幅技術は、同社の従来技術と比較して同等以上の生物活性を持ち200倍以上の樹状細胞ワクチンを生成することが可能。細胞培養における生産性が大幅に向上する技術として注目され、新エネルギー・産業総合技術機構(NEDO)の「イノベーション実用化ベンチャー支援事業」に採択された。早ければ2014年末にも治験開始を目指す方針。また、薬事法改正などの動きも踏まえて細胞培養受託ビジネスの事業化も検討していく。

同社は、一連の競争力強化、医薬品化の推進などに取り組むことで、中期的に10%以上の継続成長を目指す考え。

 

※「連載 台頭する創薬・再生医療ベンチャー」は今回より、隔週木曜日掲載に変更します。

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