【連載】再生医療と化粧品開発への応用(3)再生医療技術活用の化粧品開発に40社が参入
2015.09.2
編集部
繊維や化学、電子部品、ヘルスケア、化粧品など複合事業を多角的に展開するセーレン(福井市)は、絹糸の原料となる繭から抽出したタンパク質「セリシン」を利用 したiPS細胞などの幹細胞凍結保存液を福井大と共同開発し、代理店を通じて医療機関向けに販売している。
iPS細胞などの幹細胞を保存する場合、一般的に、液体窒素を使って急速凍結させるガラス化法で行われる。しかし、これまで秒単位の迅速な操作が要求され、熟練者でなければ結果が安定しないといった技術的な問題や発がん性の疑われる物質が含まれるなど安全面で課題があった。
同社が開発した幹細胞凍結保存液は、セリシンを用いて糖及び塩濃度を調整することで、熟練技術者の能力、技量によらず安定的に幹細胞を保存でき合わせて保存液を加えてから凍結するまでの許容時間が従来の15秒から60秒まで延長できるのが特徴。現在、代理店を通じて「セルリザーバーワン」の商品名で拡販中。
セリシンの有効活用は、ヘルスケア分野のみならず化粧品事業への展開も活発。これまでセリシンに含まれるアミノ酸を成分としたスキンケアブランド「コモエース」(写真)を商品化して市場に投入してきた。これに加えて今年4月には、高島屋と合弁会社を設立して化粧事業の強化に打って出た。
合弁会社は「Dear Mayuko(ディア マユコ)」で出資比率は、高島屋61.2%、セーレン38.8%の割合。スキンケア、スカルプケア、ボディケア全般にわたる商品企画、販売を手掛け収益の向上に繋げる。
コーセーは、老化を示す指標で、染色体の両端にある構造の「テロメア」についてiPS細胞を用いて初期化することで、テロメアがどの程度回復するか調べた。
異なる年齢の肌の細胞をiPS細胞にして分析したところ、加齢とともに短くなるはずのテロメアの状態が5つのすべての年代で回復し、長くなったことを確認している。
こうした成果を踏まえて同社は、現在、iPS細胞の皮膚科学への応用と化粧品の開発に応用する研究を促進している。
カツラメーカーのリ―ブ21は、神戸ポートアイランドに研究所を開設(2009年)し、毛髪形成を自在に制御する技術や髪を作り出している組織が発達する現象「毛包分化」などのメカニズム研究に力を入れて取り組んでいる。
現在、再生医療技術を化粧品開発に採り入れて次世代型化粧品、毛髪剤などの実用化に取り組んでいる化粧品専業や新規に化粧品分野に参入した企業を含めて約40社にのぼると見られる。
iPS細胞に代表される万能細胞は、日本で開発された固有の技術であり再生医療、新薬開発の胎動が具体的に表れ出してきた。経済産業省によるとiPS細胞を中軸とした再生医療の国内市場規模は、創薬、機器、美容関連を含めて2012年の約90億円から2030年には、約2兆円に拡大する見通し。
この中で、再生医療を応用して創出される新規化粧品のビジネス規模は、約600億円にのぼると推計されており、新たなビジネス創出に賭ける期待が高い。今後、iPS細胞を応用した次世代型化粧品分野に参入する企業が相次ぐと見られ、ドル箱的存在としてさらに参入の動きと開発の加速化がさらに増すと見られる。
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