【連載】凌ぎを削るメディカルツーリズム(1)凌ぎを削るメディカルツーリズム

2013.04.11

特集

編集部

医療と観光を組み合わせて世界の患者を呼び込む

外国人旅行者に人間ドッグや整形、医療手術などを施し、観光サービスも行う滞在型医療・観光サービス事業「メディカルツーリズム」に期待が高まっている。
すでに、先進国のシンガポールやタイなどは、中国、中近東の富裕層患者をターゲットにプロモーション活動を活発に展開、ドル箱産業に躍り出た。これに対して日本は、海外の医療事情やサービスの提供などについて実態調査を始める一方、一部の大手旅行会社がサービスに乗り出した。
しかし、患者を受け入れるJCI(国際病院評価機構)認定の医療機関が少ないことやサービス態勢、PRなど多くの課題を抱えるなどタイ、シンガポールとの距離は開く一方だ。日本の高騰する医療費を外貨で稼ぐ同ツーリズムに期待する声が大きいが日本独自の高度医療技術を生かした医療・観光を組み合せたサービスを早急に確立することが必要だ。

シンガポール、医療・観光セットで外貨稼ぎ

医療観光「メディカルツーリズム」は、外国の病院で臓器手術や整形、人間ドックなどを受け合わせて滞在中に観光もすることで健康を回復すること。米国の調査会社によると医療観光市場は、全世界で1000億ドル、約9兆3千億円規模に達したと推計、成長市場に躍り出た。

この医療観光にいち早く注目して市場に参入したのがメディカルツーリズムの先進国シンガポール。約20年前からインドネシアやブルネイの富裕層を中心に医療サービスを提供。

2012年で「約90万人の外国人がメディカルトラベラーとして来訪し医療手術を受けた」(保健省)。内訳は、患者約60万人、患者の随行者約30万人となっている。

ここへきて、シンガポール政府は、300万シンガポールドルを投資して中国の大手旅行代理店と提携し人間ドックを滞在プログラムに組み込んで中国人の富裕層取り込みを強化している。特に、シンガポールは、外国人患者向けのサービスとして多くの私立病院がサービスセンターを設け来院前のホテル予約から観光プラン、お土産の手配などトータルサービスに力を入れるなど顧客獲得に繋がっている。

 

タイ免税措置で手術代格安

このシンガポールを激しく追っているのがタイ。タイは、民間病院協会がアラブ首長国ドバイに駐在事務所を開設して患者受け入れ活動を展開。
また、タイ国内にある米系のバムルングラード病院は、ドバイ警察と協定を結び警察官とその家族を対象とした定期健康診断を始めている。

タイは、1996年から30億バーツを投じてタイで最古の「シリラ病院」隣接地にヘルスケア、バイオメディカルリサーチの研究所を建設、外国人患者の受け入れに積極的に対応している。
タイの強さは、シンガポールと比べて医療手術代が安いこと。タイで心臓バイパスの手術料は、平均で1万ドル程度。シンガポールの約2万6千ドルと比べて格安だ。中でも、美容整形や歯科治療、視力矯正、シワ、シミ取りのレーザー治療などについても外国人から人気が高い。
タイが医療コストを低く設定できる背景には、タイ政府が医療機器の輸入関税をゼロにしていることや新設病院を5年間、免税にしているなどの要因による。

自然を利用したホリスティックリゾートも外国人から人気が高い。タイ王室御用達の保養地ホアヒンにある「チバソム」は医療専門家、看護士が常駐し最先端の医療を受けながらタイマッサージ、水中指圧などでリフレッシュができることから世界中の患者、家族が訪れている。タイの外国人患者の累計受け入れ数は、2012年で300万人を突破した。

 

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