【連載】大手化粧品会社の研究(88)サンスターの化粧品研究~大学との共同研究盛ん、具体的な化粧戦略見えず~(下)
2019.04.12
編集部
サンスターは、紅花から抽出した脂肪酸の一種で美白成分の「リノレックS」を配合した化粧品「エクイタンスホワイトロジーエッセンス」を2005年に初めて通販限定商品として投入・販売した。
同商品は、2018年に肌荒れを防ぐ2つの抗炎症成分「グルチルリチン酸ジカリウム、トラネキサム酸」を加え、シミが発生する肌の初期炎症を鎮めるなどの美白成分を届ける処方にパワーアップを図った。また、肌全体を面として明るく輝かせる美白美容液として進化させた。
現在、エクイタンスホワイトロジーエッセンスを中心に通販市場に投入・販売している化粧品アイテムは、シミ・そばかす商品4品目、肌の乾燥商品4品目、肌の保湿商品4品目、美白ケア商品3品目、肌の透明感商品3品目など合計約30品目に上る。
同社の化粧品開発、製造・販売などの化粧品事業は、社内カンパニーのヘルス&ビューティーカンパニーが担当。サンスター全体の売上高に占めるヘルス&ビューティ部門の売り上げ比率は、2017年度で約12%程度と見込まれている。
一方、同社は、この3~4年の間に、化粧品分野で大学との共同研究を活発化している。同社は、毛髪内の亜鉛が減少することでハリ・コシをダウンさせる1つの要因であるとの研究成果を踏まえて椙山学園大と共同研究に取り組んだ。
共同研究では、キューティクル層にある亜鉛量を化学処理で、減少させると実際にハリ・コシが減少すること。また、亜鉛量を減少させた髪(=加齢モデル毛)に亜鉛を浸透させることで、ハリ・コシがアップすることを実証。さらに、ハリ・コシがアップした毛髪は、キューティクル層の内側に亜鉛が多く浸透していることなどを確認した。
こうしたエイジング毛研究は、ヘアケア技術としてスタイリング剤のVO5やトニックシャンプー開発へ活かされている。
2015年3月には、弘前大学との共同研究で、鮭鼻軟骨から抽出した新規プロテオグリカン複合体(ヒアルロン酸及びコラーゲンとの複合体:写真)の抽出技術を開発するなどの成果を生み出している。
同社と弘前大学は、2007年8月に「研究連携の推進に係る協定」を締結。以降、タンパク質を軸としてコンドロイチン硫酸などの糖鎖が複数連合した糖タンパク質のプロテオグリカンの新たな生理活性の探索と生理活性を高める抽出技術の開発を共同で進めてきた。
その結果、鮭の鼻軟骨から酸やアルカリ、有機溶媒を一切使わず熱水のみでプロテオグリカンを生体内と類似した構造のヒアルロン酸とコラーゲンとの複合体の形で抽出する新技術「熱抽出法」を開発した。熱水のみの抽出法のため、精製工程が簡略化でき、低コストでの製造が可能となった。また、有用性評価において人での経口摂取による日やけ予防機能を確認している。
このような研究成果を化粧品開発に生かして今後、グロ-バル市場でどのような戦略のもとに化粧品を拡販し収益につなげていくのか、具体的な戦略が見えない。