IHTA理事長秋山融氏に聞く!整体・リラクセーションサロンの現在
2013.03.14
編集部
「整体コース60分3000円」――高まる癒しニーズに応えるように整体・リラクセーションサロンが乱立している。そのなかで、これまでの常識を覆すような価格破壊も起こりつつある。消費者にとって、また業界にとって吉と出るのだろうか。社団法人国際ホリスティックセラピー協会(IHTA) 理事長 秋山融氏にお話を伺った。
グレーゾーンと言わざるをえない整体サロンも
社団法人国際ホリスティックセラピー協会(以下、IHTA)は、「整体師(メディカルトレーナー)」「リフレクソロジスト」「ヨガインストラクター」といった独自の認定資格制度や認定校の指定、およびホリスティック医学に関する講習会開催などを通した技術普及などを行っている。
「整体師は資格を有していなくともサロンを開業することができます。そのぶん能力が問われる職業です。現在は残念ながら、技術力が未熟な人も多く、グレーゾーンと言わざるを得ない状況だと感じています」と語る秋山融氏。国家資格である柔道整復師や鍼灸師などは医療類似行為であるため、治療内容に具体的な病名を掲げることはできない。一方で整体サロンは施術方法も整体師の判断に委ねられているが、そのぶん消費者にとっては自分に合ったサロンを見つけにくく、インターネットの情報やクチコミなどを中心に選びがちだ。
そのなかでIHTAでは「ホリスティック」を掲げているように、西洋医学・東洋医学の垣根を越えて顧客を健康な状態に導く技術の普及活動を行っている。秋山氏は整体院の院長として数多くの患者を診てきた経験から、頸椎と骨盤を整えることで髄液、血液などの流れを整えるという「AP理論」を提唱。整体技術を論理づけることにより、整体の施術で身体にどのような変化が起きるかを、整体師だけでなく一般の消費者にも認知してもらえるよう努めてきた。
いま、街中ではさまざまな整体サロンが乱立している。「価格破壊はどの分野でも起こっていること」(秋山氏)というように、整体サロンも例外ではない。しかし、事業的にコスト削減が難しい整体サロンにおいてメニュー価格を下げるためには、必然的に人件費も削らざるを得ない。そのなかで良い腕をもつ整体師をサロンに引き止めることは難しいのではないだろうか。
低価格を謳うことのデメリットもある。「お客様としても、安いサロンには“ちょっと疲れがとれればいいか”という意識で行く人もいるのではないでしょうか」(秋山氏)というように、整体師・顧客ともに不調の原因に目を向けることなく、その場限りの施術となってしまう恐れがある。
こうしたことが重なった結果、将来的に「整体サロンはもういいわ」といった“整体サロン離れ”という事態も招きかねないだろう。
未来の整体師に「他者の身体に責任をもつ」重要性を説く
秋山氏は、現在は教育・後進の育成を中心に活動を行っている。
整体師や治療家を目指す人のプロフィールはさまざまだ。看護師など医療に携わっていた人や、事務系の仕事を退職した後に“手に職をつけたい”と新たなキャリアを始める人もいるという。過労による腰痛など、自分でも何らかの症状に悩んだ人も多く、そのぶんモチベーションも高いという。
「自分が他人の身体に触れることによって、その方の身体にどのような変化が起こるかということを把握できない整体師が多いと感じています。私は生徒に“他者の身体に責任をもちなさい”ということを重ねて伝えてきました」と秋山氏は言う。
IHTAの認定校であるYMCメディカルスクールで定期的に開催しているセミナー「秋山塾」には、毎回多くの応募者がある。秋山塾では技術的な指導はもちろんのこと、“どんなマインドをもって施術に望むか”を教えているという。「この業界は、一昔前までは徒弟制度が一般的だったのではないでしょうか。現在は資格制度や技術セミナーも豊富にありますし、勉強すれば独立・開業も可能です。しかしそのぶん、先輩の背中を見て育つという機会も減っています。それを補うような心構えを教えることを目標としています」
そのひとつが“新聞は読みましょう”というもの。「若い方は新聞を読まない方が多い。政治的・経済的な状況を知らなければお客様と会話もできないでしょう。お客様とコミュニケーションをとることも治療の一環なのです」(秋山氏)また、必要に応じて整形外科など専門医と連携し、多角的な視点で顧客の身体の不調を改善していくことも教えているという。
「今後も、第一線で活躍している治療家を招いてセミナーや講習会を開催していきたいですね。整体師は資格がないぶん、その人が生来持っている感覚が厳しく問われます。整体師を目指す方のレベルをもっと高めていきたいですね」
- 参考リンク
- 社団法人国際ホリスティックセラピー協会(TEL:03-6457-7287)