カラーリング剤とアレルギー問題(上)~美容業界に新たな火種~
2015.10.28
編集部
消費者庁は、白髪や髪の毛を染めるカラーリング剤(染毛剤)によって頭皮や顔面などにアレルギー性の皮膚炎を発症する人が今年3月までの5年間で、1,008件に上ったことを明らかにした。美容業界は、化粧品の白斑問題で今なお揺れ動く中、カラーリング剤によるアレルギー問題が新たな火種として飛散する懸念が生じている。特に、海外旅行客の化粧品爆買いにアレルギー問題が波及して需要の減少、補償問題に波及する懸念も取り沙汰されるなどカラーリング剤に使われている化学物質の安全性担保が焦眉の急となっている。
現在、医薬部外品としてヘアーサロンなどで使用されているカラーリング剤(写真)にはヘアカラー、おしゃれ染め、白髪染め、ヘアダイ、アルカリカラーなどの「酸化染毛剤」と白髪を黒く染めるのに使う「非酸化染毛剤」、それに、ブリーチともよばれてメラニンを分解して脱色する脱色剤・脱染剤がある。また、毛髪をキューティクルに染料・コーティングするカラーリンス、ヘアマニキュアなどの半永久染毛料や一度のシャンプーで色落ちするカラースプレーなどの一時染毛料がある。
これらの、カラーリング剤に使用されている主な化学物質は約700種類とみられ、そのすべての成分が厚労省の薬事法に準拠して使用が認められている。
カラーリング剤に使用が認められている代表的な化学物質として「パラフェニレンジアミン」(PPD)をはじめ「アミノフェノール」や「レジルジン」「パラアミノフェノール」などがある。
この中で、アレルギーの原因として指摘されている代表的な物質がパラフェニレンジアミン」(PPD)だ。
PPDは、アンモニアに過酸化水素で酸化することで発色する。一旦、酸化され重合すると抗原性はなくなる。
PPDには1剤と2剤がある。1剤はアルカリ剤、酸化染料、調色剤、直接染料等を含む。2剤は、主に過酸化水素を含む。特に、PPDは、似た構造式を持つPTD(光の励起にによって発生する光感受性物質)などの化学物質と交叉反応(抗体と反応してアレルギーを引き起こす物質)してアレルギーを引き起こすことが知られている。
カラーリング剤によるアレルギー症状は、頭部から顔面、耳の後ろ、首などに湿疹、かぶれの症状がでる。ひどくなると顔面が変形するほどの重症になることも報告されている。
人によってアレルギー反応の頻度、度合い、症状などに違いがあるとはいえ、アレルギー症を引き起こす化学物質の安全性問題が白斑問題で揺れる美容業界に新たに、一石を投じる格好となった。