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カナダのウェルネスクリニックに学ぶスパ顧客体験向上の実践

これらの障害がある一方で、カナダのウェルネスクリニックの取り組みにはフランスのスパ運営者が参考にできる点が多くあります。

パーソナライズ診断の導入

顧客の全体的なニーズを把握するためのウェルネスチェックを取り入れましょう。すべてのサービスを提供できなくても、アドバイスや他の専門家への紹介を通じて専門性を示せます。専門性は品質につながり、結果としてプレミアム価格の設定も可能になります。

専門家同士の連携強化

医師を組み込むことはできませんが、ナチュロパスやオステオパス、鍼灸師など外部専門家とパートナーシップを築くことで「ホリスティックなスパ」として認知されます。

サブスクリプションの活用

複数の施術を組み合わせた月額プランを提案し、継続利用を促しましょう。たとえば、マッサージ・フェイシャル・ソフロロジーを組み合わせた1か月のプログラムは、ストレス軽減とリラクゼーションを目的に販売できます。もちろん医療的な誇張表現は避ける必要があります。

顧客体験のデジタル化

オンラインでのウェルネスアンケート導入は、効率化と顧客維持につながります。事前にメール送信するか到着時に入力してもらうことで、顧客のメールアドレスを収集し、ニュースレターなどを通じてコミュニティを育成できます。

予防意識の啓発

医療的権限はなくとも、アーユルヴェーダや中国医学、バッチフラワーなどをテーマにしたワークショップを提供し、健康意識を高められます。こうした活動は有料サービスのリピートにつながります。

チームの継続的学習を推進

専門誌の購読や国際学会への参加、新製品プレゼンテーションの依頼などを通じ、スタッフが最新の予防的ウェルネスに触れられる機会を増やしましょう。社員の知識や意欲が高まれば、今後のイベント企画や顧客への提案も一層活発になります。

マーケティングや営業面にも学ぶべきアイデアが多数!

ウェルネスクリニック同士の競争は激しく、顧客を呼び込むためにさまざまな工夫を凝らしています。その中には、フランスのスパでも有効に活用できるアイデアが少なくありません。

予約前の段階

ブログの開設

各施術がどのように顧客の問題解決につながるかを解説する記事を掲載します。例えば「カイロプラクティックが腰痛改善に役立つ方法」や「意外と知られていない鍼治療の5つの効果」などです。

Instagramでの発信

施術者とクリニックの公式アカウント双方から、毎日欠かさず投稿を行います。

ベネフィット利用の喚起

毎年11月1日以降、顧客や見込み客に向けて、年末(12月31日)までにベネフィット(フランスの相互保険に相当)を忘れずに利用するよう定期的に案内します。翌年1月1日には権利がリセットされてしまうためです。

シンプルな予約プロセス

施術者を選んで予約可能

顧客が自ら担当施術者を選択して予約できます。

クレジットカードの事前登録

予約確定のためにはクレジットカード情報が必須で、電子カルテに保存されます。この仕組みにより、フランスで依然として頻発する「無断キャンセル」が発生しないようにしています。

ベネフィット情報の事前収集

勤務先が契約する保険会社の情報(契約番号・会員番号など)はこの段階で入力を求められます。これにより、クリニックが直接請求処理を行い、顧客は自己負担分のみを支払えば済みます。

オンラインでの事前入力

健康に関するアンケートや各種免責事項はオンラインで記入します。そのため、来院のたびに担当施術者はすぐに最新の情報にアクセス可能です。こうして顧客の情報が途切れることなく管理されるのです。

さらに、これらの免責事項には「施術者に対する不適切な言動への対応」も明確に盛り込まれています。万一そのような行為があれば、顧客は即時に利用停止となります。

クリニックとセラピスト ― 2倍の発信機会

一般的に、ウェルネスクリニックには正社員スタッフが存在しません。オーナーは多くの場合、豊富な経験を持つセラピストであり、自らの売上を拡大したいと考えています。しかし、自分一人の施術時間には限界があります。そのため、クリニックを立ち上げ、複数の施術室を備えた施設を借り、セラピストに対して週のうち決まった日数を貸し出すという形態が取られます。これは最も一般的な運営方法です。フランスでもこうした仕組みが登場し始めていますが、まだ「温かみ」に欠けるケースが多いのが現状です。

多くの契約において、セラピストは自身のプロフェッショナルなSNSアカウント(特にInstagramとLinkedIn)を持ち、自分の活動を発信することが義務づけられています。そこにクリニック名義のSNSによる情報発信が加わることで、コミュニケーションの機会は飛躍的に増加します。これは、フランスの企業でよく見られる「エンプロイー・アドボカシー」(社員一人ひとりがSNSで企業を代表して発信する取り組み)に近い仕組みです。多くの社員がLinkedIn上で同じメッセージを発信し、企業全体の存在感を高めるのと同じ発想といえます。

グローバル視点で学ぶスパの収益性と競争力強化のヒント

カナダのウェルネスクリニックは、予防と多分野的アプローチを重視した革新的なモデルです。フランスにそのまま導入することは困難ですが、一部の実践を柔軟に取り入れることで、スパの魅力と収益性を高めることが可能です。グローバルな視点で顧客の期待に応えることが、今後の競争力強化につながるのです。



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Inner Beauty Award 2025 ―受賞商品発表―

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FLORENCE KOWALSKI

FLORENCE KOWALSKI

ウェルネス・コンサルタント

フランス雑誌「Les Nouvelles Esthétiques」の寄稿者であり、ウェルネス分野のコンサルタントとして活躍しています。ウェルネスやコスメティクス分野のウェブ記事編集者でもあり、美容分野でCAP資格やBTS資格を取得後、ホテルスパ業界の発展を目指してマーケティングと経営のコンサルタント会社「Spaboosting」を設立しました。顧客エクスペリエンスの向上や収益性の確保を目的とした手法を開発し、スパ収益性のエキスパートとして高く評価されています。

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