株式会社アライタダオエクセレンス 代表取締役新井唯夫さん

インタビュー

監修:美容経済新聞

美容業界に対する想い。氏にとってのプロフェッショナルとは

花上:“伝統を守り抜く”ことは並大抵のことではないと察しますが、2代目として受け継がれたときにご苦労されたことなどはありますか?

新井:そうですね。かつて父が主宰していた時代には、個々の美容師が各支部に組織された状態で講習会が行なわれていました。すると、次第に派閥ができたり、古くからの先生方で固まってしまったりして、若い人たちが入りづらい雰囲気ができ上がってしまっていました。私が2代目として受け継いだとき、なんとかしてそのシステムを変えていきたいという思いがありまして。まず、美容ディーラーやメーカーに声をかけました。ディーラー・メーカーに講習会を主催していただいて、受講料集めや運営を行っていただく代わりに、そこで利益を生んでもらう。そうすることによって、それまで主催していた美容師はゲストという立場になり、運営の手間も省けます。また、ディーラー・メーカーの方々に宣伝していただくことで美容師ならば誰でも参加できる仕組みづくりが実現できる。そういったシステムにした結果、業界の中での連携が上手にとれるようになったと思います。

花上:そういった仕組みづくりは美容業界の向上にもつながりますね。素晴らしいと思います。

新井:はい。業界の発展には、ディーラー・メーカー・サロンがお互いにwin-winの立場でなければならないと思いました。やはり業界が大きくなるにつれて、いろいろな意味で偏りが出てきてしまうのは否めません。しかし、それでは技術や情報の共有ができないのも事実です。ですから、講習会やイベントの人気が高くなってくると、受講料をはね上げたり敷居を上げたりするのが一般的ですが、一定の金額以上は上げないような規定を作るなどして、平等なシステムを実現しました。

花上:なるほど。エステティック業界にも見習うべき点があることを感じます。ところで、新井さんは、ヘアメイク業界で頂点を極められている方の一人ですね。とくに「アップスタイル」の第一人者として、確固たる地位を築かれていらっしゃいます。その陰には多大なる努力やご苦労があったことと思いますが、そのように高い目標を達成するまでの道のりでは、何が支えになっていたのでしょうか?

新井唯夫02_Ph01

新井:人間というのは生きる上で、つねに誰かと接しながら生きていますね。とくにメイクアップやエステティックに関わる仕事をしている中では、相手のことをよく観察したり、気持ちを理解したりすることが技術以上に重要なことになってきます。私は、「相手がよくならないと、自分もよくならない」、逆も然りで「自分が良くならないと、相手もよくならない」そんな風に考えながら、自分を成長させてきたように思います。

花上:相手と自分を相互に思いやる気持ちを大切にしてこられたわけですね。新井さんが講師を務める講習会の中でも、そのような精神論をよくお話しになられるのでしょうか。

新井:はい。よくお話しさせていただいています。
たとえば、「『いくら練習しても技術が上達しないが、優れた人間性を持っている人』と、『非常に優れた技術があるが、人間性を欠いた人』は、どちらが先に成功するか」といった類のお話です。結果からいうと前者であるわけですが。いくら技術に長けていても、相手の心を見抜く目がなかったら全然関係ないことをしてしまうこともあります。それでは単なる自己中心的なサービスになってしまいますね。逆に、人間性がよくて技術が下手という人は、相手の気持ちを汲むことはできるので、“相手が何をして欲しいか”を理解することができます。

少ない技術の中でも、はずさない。相手に寄り添ったサービスが提案できるのです。
同じ技量の人が二人いたとしたら、やはり思いの強さだったり、好きの度合いだったり、人とのつながりだったりとかが大事になってきますよね。そういったことがあると、すごい人に教えてもらうチャンスが得られたり、思いがけない好運が舞い込んできたりすることもあります。ことトップの世界になってくると、ちょっとした違いがすべてを変えてしまうこともありますから。技術を高めていくと同時に人間性を育てなければ、いくら努力しても負けてしまうことはあるかもしれませんね。

花上:上を目指してがむしゃらに努力することも必要ですが、人間関係や心持ちを高めことが大切なのですね。

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新井唯夫 Tadao Arai

Profile
「FEERIE」銀座店やエステサロンでのサロンワークのほか、美容専門誌やテレビ番組に出演する人気ヘアスタイリストで認定エステティシャン。毎年全国各地で数億のヘアショーや実技講習をプロデュース。
受講者は年間2万8千人を超え、過去の講習回数は1700回に及ぶ。

都内にサロン「FEERIE」を6店舗展開する「株式会社アライタダオエクセレンス」と、自らがプロデュースしたビューティーアイテムを販売する「株式会社ジュニュイン」のPresident&C.E.O。

「美容研究全国新井会」主宰。
オリジナルブランド「TADAOARAI」(アクセサリーシリーズ、アロマオイル、ピュア化粧品ほか)、実用書9冊、他DVD等多数。

FEERIE http://www.feerie.jp/
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美容研究全国新井会  http://www.arai-kai.net/
TADAO ARAI.COM  http://www.tadaoarai.com

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