再生医療製品が勃興、細胞シート臨床研究、自家培養軟骨、症例手術実施
2013.07.31
編集部
ベンチャーを牽引役に細胞を扱う細胞シートなどの再生医療製品が勃興してきた。セルシードは、大学病院で細胞シートを患者に移植し、機能再生や臓器移植などの臨床研究に踏み切った。また、冨士フイルムが筆頭株主のャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)は、自家培養軟骨「ジャック」の第1症例手術を広島大病院で実施するなど再生医療製品の実用化に拍車がかかる状況になってきた。
iPS細胞と同じ再生医療製品に挙げられる細胞シートは、食道、軟骨、心筋などの細胞を大腿部、粘膜などから採取し、生体外で調整、培養、加工してシート状にし、損傷した部位にシートを貼ることで、傷んだ組織を組成・再生させるもの。
バイオベンチャーのセルシード(2001年5月設立、ジャスダック上場)は、再生医療製品の細胞シート(写真)を錦の御旗にしてビジネスに拍車をかけている。
同社は現在、細胞シートの開発・販売を行う再生医療事業と培養器材の開発・販売を行う再生医療支援事業の2事業をメインに国内、海外事業を展開している。
これまで、移植時に縫合が一切必要ない角膜、食道、軟骨、心筋、歯周組織など5つの再生細胞シートを開発(2012年6件の国内特許成立)し市場投入。培養器材の開発・販売を行う再生医療支援事業に関してフナコシ、島津ジーエルシ―、和光純薬工業と相次いで代理店契約を交わし、病院や医療研究機関向けに販売を始めている。また、角膜再生上皮シートについて欧州、イスラエル、オーストラリアなど海外でも販売を始めている。さらに、東京女子医大、大阪大、東海大と提携して細胞シートを患者に移植し、機能再生や臓器移植などの臨床研究に踏み切った。
同社の2013年12月期売上高は、器材販売7千万円、米エマウス社からの契約一時金1億1千万、その他3億5千万の5億3000万円を計画。
富士フイルムホールディングスが株式の41%を取得(2010年)するジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC・ジャスダック上場)は、生きた人間の細胞を使って組織や臓器を人工的に作り出すティッシュエンジニアリングを標榜し、ヒトの細胞と人工的に作られた材料、生理活性物質の3つの要素を有機的に組み合わせて開発した再生医療製品の自家培養表皮「ジェイス」(商品名=写真)を厚労省から製造承認を取得(2007年10月)。保険償還価格(薬価)は、1枚30万6,000円。自家培養表皮ジェイスの適応対象は、重症熱傷で受傷面積として深達性Ⅱ度熱傷創及びⅢ度熱傷創の合計面積が体表面積の30%以上の熱傷。
2012年7月には、自家培養軟骨「ジャック」(同=写真)の製造・販売を厚労省から取得し、公的保険の適用(2013年4月)を受けた。
ジャックの保険償還価格(薬価)は、208万円。適応対象は、膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)。ただし、他に治療法がなく、かつ軟骨欠損面積が4平方cm以上の軟骨欠損部位に適用する場合に限る。今年6月、保険適用された自家培養軟骨「ジャック」の第1症例手術を広島大病院で実施した。
こうしたジャックを中心に再生医療製品の製造・販売承認と公的保険の適用に伴い同社の売上高は、2014年3月期9億6000万円、2015年3月期17億3000万円、2016年3月期27億円と大幅増収となる見込み。