アルコール依存症薬が肥満症改善にも効果か

最新商品

2020.06.16

国際部

アルコール使用障害治療薬のジスルフィラムが肥満マウスの体重減少、代謝機能の改善に効果を示したという研究結果が514日、アメリカ国立衛生研究所所属の国立老化研究所(NIH/National Institute on Aging)からニュースリリースされた。研究の詳細は「Cell Metabolism」オンラインに掲載されている。ジスルフィラムは、アルコール依存症治療薬として50年以上もの使用実績がある薬剤で、人体への安全性も確立している。

国立老化研究所の科学チームは、高脂肪食を12週間与えられた生後9か月の実験用マウスを対象に、ジスルフィラムの転用試験を実施した。マウスを標準食のみ、高脂肪食のみ、低用量のジスルフィラムを含む高脂肪食、高用量のジスルフィラムを含む高脂肪食の4グループに分け、さらに12週間の試験を行った。その結果、高脂肪食だけを続けていたマウスのグループは体重が増え続け、代謝に問題があることが確認された。標準食のみに切り替えたマウスのグループは体重、脂肪組成、血糖値が徐々に正常に戻ることが確認された。

残りの2つのグループ(低用量のジスルフィラムを含む高脂肪食、高用量のジスルフィラムを含む高脂肪食)のマウスでは、体重と関連する代謝損傷の劇的な減少が認められた。高用量ジスルフィラムグループのマウスはわずか4週間で体重の40%が減少、標準的食に戻されたマウスグループの体重まで戻った。低/高用量どちらのジスルフィラムグループのマウスにも体重減少が認められ、標準食に戻されたマウスと同等の血糖値の有意な改善を示した。今回のポジティブな結果はジスルフィラムの抗炎症特性に由来すると考えられており、実験用マウスにおいて、空腹時血糖や代謝効率を改善しながら高脂肪食や体重増加による損傷からの回避を達成した。4つのグループすべてで有害事象は認められなかった。

科学チームはこれらの結果は動物実験に基づいていることを強調しており、現時点では人間にとっての潜在的な利益を推定することはできないとし、ジスルフィラムを臨床試験以外での使用、体重管理への適応外使用に処方しないようにと警告している。しかし今回の調査結果を踏まえ、チームはジスルフィラムの可能性を研究するための次のステップを計画しており、肥満のヒトを対象とした臨床試験、薬物の分子メカニズム解明の研究、ほかの薬剤との組み合わせによる効果の探索などの詳細な研究が考えられている。

#

↑