レセプトから医療情報をデータベース化、JMDCが経産省委託事業

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2013.09.30

編集部

健保の医療費削減に提言

日本医療データセンター(JMDC=東京都港区芝大門、木村真也社長)は、医療機関から企業の健康保険組合に医療費の請求が来るレセプト(診療報酬明細書)や企業の健康診断書を分析して患者数の推移、薬の効率的な投与を提言している。企業と連携したその「保険者と企業連携による医療費実施把握とベストプラクティス基盤整備」事業が経済産業省の平成25年度委託事業に採択された。 社会はますます高齢化し医療費がかさんでいるのに、企業従業員の給与は伸び悩んでいるからその分、保険料は低下する。健保組合の財政は悪化の一途である。そこで健保に請求された過去10年以上にわたる膨大なレセプトのデータを分析し、安い薬の効率的な運用や企業従業員の健康診断の未受診、中断などで病気が悪化して医療費がかさむ実態などを提言、医療費負担の削減に貢献しようという狙いである。この事業は、認知症など高齢化進行による医療費増大への歯止めをという国の方針ともマッチしている。 健保に回ってくるレセプトは「情報の宝庫」で患者名、年齢から病歴、病名、投与の薬名などあらゆる医療情報が記録されている。しかし、個人には開示されていないし、健保もそのレセプトの内容を担当者が少ないから物理的に分析できない。従業員に病気の進行推移や薬の無駄など問題点を忠告できれが、従業員が支払う医療費は現在の半分で済むかもしれないのだ。その分析をJMDCが引き受けようというわけである。 木村社長によると、ビジネスは三つ。(1)医療保険者(健保)には、医療費負担の軽減と加入者の重症化予防への提言(2)大学の研究者や有識者へのデータ提供、がんの研究、糖尿病などの疫学、公衆衛生学への活用(3)製薬企業など産業界へ、新商品開発などに活用━の三点である。 加入者は現在50健保、150万人だが、1千万人を目指している。

健保を「見える化」するのが目的

JMDCの執行役員小平紀久氏に聞く

JMDC執行役員・小平紀久氏

―日本医療データセンター(JMDC)とは、どんなことをしている会社なのですか。

「我々のビジネスの核になっているのは三つの業界です。第一は企業の健康保険組合。健保は医療保険の核にもなっていますが、高齢化の進行で病院に行く人が増え、医療費の支払いは増えているのに、健保に加入している従業員の保険料は給料のダウンなどで減少し、収入と支出が逆転している。健保の医療費削減はどうすればできるのかを考え、健保に請求がくる医療報酬明細書(レセプト)のデータを分析し、安い医薬品の投与など効率化で医療費削減などを提言しています。第二は製薬会社相手で、患者数の把握や医療用医薬品の新製品開発を提言します。第三はOTCメーカー(処方箋がなくても、街のドラッグストアで購入できる薬や食品を製造している会社)などで、健康食品や生活用品メーカーなどに糖尿病などの患者の推移を知らせ、食品や生活用品の販売促進のエビデンス(根拠)としています。」

―その健保組合向けの事業が、経済産業省の平成25年度委託事業に採択された「保険者と企業連携による医療費実施把握とベストプラクティス基盤整備」ということですね。そのエビデンスがレセプト(医療報酬明細書)ということですか。

「そうです。レセプト(病院と薬局)には投与した薬の名前、金額から病名、病歴、家族構成など病気に関するあらゆる個人情報が記録されています。このレセプトは健康保険証を発行している健保にすべて届きます。例えば、新規の糖尿病患者は増えているのか健保にはわからない。我々は毎月更新される150万人分データを持っているので、何年後にはどのくらい増えるかを提言できる。そういう情報を健保に提言するわけです。」

―その発想どこから生まれたのですか。

「社長(木村真也氏)もそうだが、我々は製薬会社で働いていた。薬は売っているが、どのくらいの量が使われているのか、医師に聴かねばわからなかった。医師も自分の患者しか分からない。日本にどのくらいの患者がいて、どのくらいの合併症があり、どのくらいの医療費がかかるのか、データがなかった。そこに目を付けてベンチャーキャピタルから資金の提供を受け、2002年に創業したわけです。」

―日本では初めてですね。将来の発展性はどうですか。

「外国にはありますが、日本では初めてです。患者の傾向が10年、20年後にどうなるかわかれば、エビデンスは高くなるのでそれに伴って商品開発もできる。医薬品だけでなく医療機器、健康・生活用品の開発にも役立ちます。経産省から委託を受けた事業で健保の見える化をしようということです。従業員にも見えるようにして健康増進に役立ちますよと提言する。経産省もそうした企業の活性化を推進しています。」

参考リンク
日本医療データセンター

 

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