漢方の将来ビジョン研、提言骨子をとりまとめる

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2017.02.10

編集部

一般社団法人 日本東洋医学会(会長・佐藤弘氏)と日本漢方生薬製剤協会(会長・加藤照和氏)共催による「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会」(会長・高久史麿氏)フォーラムが9日、都内で開催され、同研究会がこれまで議論してきた内容を提言骨子として取りまとめた。

提言骨子は大きく6点にわけられる。一つは高齢者のフレイル、がん支持療法をはじめとする医療における漢方製剤等の必要性。フレイルは加齢や慢性疾患の積み重ねによって脆弱で、ストレスによって生活自立が損なわれやすい状態を指し、要介護の一歩手前という位置づけで、これから元気になれる余地がある。漢方医学の「腎虚」により起こる諸症状は「フレイルと共通点が多い」(国立長寿医療研究センター理事長・鳥羽研二氏)のが特徴。認知症に「抑肝散」を処方するなど効果を上げつつある。

男性だと2人に1人が罹患すると言われるがんについては、DPC(診療群分類別包括払い制度)データを用いた分析によると「がん入院患者の7人に1人は漢方薬を使用している」(国際医療福祉大学副理事長・北島政樹氏)。中でも大建中湯の投与が最も多く、術後の合併症(腸管麻痺)でエビデンスが構築されつつあり、入院費の削減につながるという報告がある。

2つ目は、漢方製剤等にかかわる研究の推進。具体的には、がん領域ではバイオマーカーの開発など、高齢者医療ではポリファーマシーの視点を含めた安全性データの蓄積や西洋薬の副作用対策としての有用性検討など。このほか、医療経済学的研究の推進、新規領域・疾患への応用研究、研究支援体制の構築と研究費支援、エビデンスに基づく診療ガイドラインへの掲載が盛り込まれた。

3つ目は、漢方製剤等の品質確保と安定供給に向けた取り組み。具体的には、多成分系医薬品である漢方製剤等に関する「リポジショニング(既存薬の別の疾患への新たな利用)や新剤型等のための品質保証および承認申請に資するガイドライン」の整備を目指す。また、原料生薬の安定確保に向けた国内栽培の推進を掲げた。

4つ目は、医療保険制度における位置づけ。これについては、「まずはエビデンスに基づく診療ガイドラインを作成した後で、位置づけを見極めたい」(高久氏)考え。

5つ目は、日本オリジナルの薬剤(Made in Japan)である漢方製剤の海外展開の推進。特に大建中湯については、日本の研究グループによるそのエビデンス発表を聞いたオックスフォード大学名誉教授のSir Peter Morris氏から、「これは補完医学ではなく、素晴らしい医薬品だとの高い評価をもらっている。漢方医学と西洋医学が融合できるのは我が国だけで、(漢方薬を)我が国の医療として世界に発信すべき」(北島氏)とした。

6つ目は、産学官・国民との連携。生薬・漢方製剤等にかかわる研究者・技術者の人材育成のほか、漢方のエビデンスやフレイル等の啓発活動の推進、大学等や国民(患者)へのアウトリーチ活動、国民の理解と納得に基づく合意形成を盛り込んだ。

今回の提言骨子は2月中に正式なものにとりまとめ、3月に関係行政・団体へ提言・要望していく予定。

参考リンク
一般社団法人 日本東洋医学会
日本漢方生薬製剤協会

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