消費者庁調査、スマホWeb広告の打消し表示「認識されていない」
2018.06.12
編集部
消費者がスマートフォンのWebページの広告表示を閲覧する際、商品を購入する上での前提条件が記載された文言が「打消し表示」され、その内容を認識している人がいないという実態が明らかになった。消費者庁が実施した「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査」によってわかった。
同調査では、スマホの表示に接する際の情報の拾い読みの特徴について検証するため、目立つ表示の箇所に視線が停留しやすい一方、それらの表示と同一画面にある目立たない表示の箇所には視線が停留しにくいか、注意を向けた表示から離れた箇所にある表示には視線が停留しにくいかを調べた。
また、スクロールしながら表示に接する際、作業記憶が失われることがある点や、その時点で見ている画面の表示内容と、離れた別の画面の表示内容との関連性を認識することができなくなることがある点を踏まえ、表示に視線が停留した者が当該表示の内容を認識していたか否かについて分析した。
具体的には、ゲイズプロットやインタビュー調査結果に基づき、対象者がどの表示に注意を向けていたかを分析するとともに、強調表示に注意を向けた者が、強調表示に隣接した箇所、強調表示から離れた箇所またはアコーディオンパネルに表示された打消し表示に注意を向けていたか否かを分析。また、強調表示に隣接した箇所に打消し表示が表示されている場合、同一画面のAOIの視線停留時間を調べて、同一画面にあるどの表示に注意を向けていたかについても分析した。
さらに、表示に視線が停留した者が、当該表示の内容を認識していたか否かについて、インタビュー調査結果で確認。そして、ゲイズプロットなどに基づき、表示の内容を認識していた者及び表示の内容を認識していなかった者の表示の見方を分析し、表示の内容を認識できた要因や表示の内容を認識できなかった要因を考察した。
調査ではさまざまな広告表示例について分析。例えば、あるサプリメント広告については、「トクトクコースは4回分の購入がお約束となります」という文言が、Webページの2箇所(強調表示と同一画面の箇所及び別の画面の箇所)に打消し表示されていたが、インタビュー調査の結果、対象者17人のうち打消しの内容を認識していた者は1人もいなかった。
「トクトクコースは4回分の購入がお約束となります」との打消し表示の内容を認識できなかった要因についてゲイズプロットなどで分析してみると、トクトクコースに関する強調表示には視線が停留していたが、Webページの2箇所に表示された打消し表示には、ほとんど視線が停留していなかったことを挙げた。また、強調表示から離れた別の画面に表示された打消し表示については、強調表示に注意を向けた者であっても、打消し表示には注意が向かなかった可能性があると考えられる。
さらに、強調表示と同一画面に表示された打消し表示については、同一画面にある他の表示に視線が停留している場合であっても、打消し表示には視線が停留していなかったとした。また、当該打消し表示の文字の大きさや色が目立ちにくく、文字と背景との区別もつきにくかったために、強調表示と打消し表示を一体として認識できなかった可能性があると指摘した。
今回の調査から、1)目立つ表示には長く視線が停留しやすい一方、それと隣接した箇所にある目立たない表示には視線が停留しにくい、2)注意を向けた表示から離れた箇所にある表示には視線が停留しにくい、ことがわかった。
こうしたことから、例えば、スマホで強調表示に隣接した箇所に打消し表示が表示されていたとしても、目立つように表示された強調表示や画像に注意が引き付けられる場合であって、他の表示などによっても強調表示よりも小さな文字の打消し表示に気付かないものであるときは、景品表示法上問題となるおそれがあることなどを指摘した。
- 参考リンク
- 消費者庁