【連載】大手化粧品会社の研究(54)桃谷順天館の会社研究 ~スキンフローラデザインの新繊維を開発、遺伝子レベルの研究にも力~(下)
2018.10.10
編集部
桃谷順天館は、悪玉菌を抑え、美肌菌(善玉菌)割合を増やす独自の美肌成分「フローラコントローラーFC161」を繊維に練りこんだ新規繊維をオーミケンシ株式会社(大阪府大阪市)と共同で開発した。
腸内の細菌と同様に肌にも皮膚常在菌(フローラ)が200種以上存在し、肌細胞と相互に作用し、互いにバランスを保ちながら存在している。
この皮膚常在菌をスキンフローラといい、肌のコンディションと密接な関わりを持つ。このバランスが悪玉優位に崩れると、皮膚トラブルの原因になることが指摘されている。
これまで肌の美しさのためには、殺菌など「菌を排除すること」が良いことだと考えられてきた。しかし、全ての菌を排除することは、美肌菌(善玉菌)をも排除することになる。
そこで、同社は、菌との「共存」が重要であると考え、繊維に美肌菌(善玉菌)を増やしシワやくすみの原因となる乾燥を防ぎ、日和見菌や悪玉菌をコントロールするスキンフローラをデザインできる新繊維開発を実現した。繊維に美肌成分を練りこんだ製造技術は、特許申請中。
両社は「フローラコントローラーFC161」を練り込んだ布と練り込んでいない布に対し、美肌菌(善玉菌)と悪玉菌のバランス評価試験を実施した。
表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌を布にそれぞれ接種し、18時間後の菌の存在比を比較したところ、黄色ブドウ球菌が10.1%であったのに対し、美肌菌(善玉菌)である表皮ブドウ球菌は89.9%を示した。
また、「フローラコントローラーFC161」を練り込んだ布と練り込んでいない布を肌に貼付し、4時間後、肌の水分量を検証した。その結果、有効成分を練り込んだ布を貼付した肌は、有効成分を塗布しない繊維と比べて水分量が約1.4倍となった(図の潤い効果試験データ参照)。
こうした実証試験で両社は「美肌成分を練りこんだ繊維の潤い効果が大きいことを証明できた」として現在、肌トラブルがなく潤いのある美しい肌へ導く化粧品や肌着などの製品開発に取り組んでいる。
一方、同社は、2018年6月に厚生労働省・日本パスツール財団の後援・タイ国王立アカデミー共催で、再生医療技術に関するASEANとの初の国際会議「 ASEAN-JAPANゲノム医療研究推進会議」を共同で開催した。同推進会議は、同社が分子生物レベルや遺伝子レベルの研究を一段と力を入れることを暗示したもの。
同社は、産学官共同で再生医療の研究や異分野の技術を取り入れた研究などにとりくんでいる。化粧品という枠を超えて「美と健康」の領域で、中長期的な視点から研究を加速させていく方針。