【連載】大手化粧品会社の研究(59)ロート製薬の会社研究 ~化粧品メーカーに変貌、化粧品売り上げ1117億円に~(上)

2018.11.12

特集

編集部

ロート製薬株式会社(大阪府大阪市)は、化粧品事業の売上高が2018年3月期(連結ベース)で1117億2600万円と総売上高(1717億2600 万円)に占める化粧品の売上比率が65%(表参照)に達した。今や目薬・アイケアを中心とした医薬品企業から化粧品企業へと大きく変貌を遂げている。
現在、スキンケア事業は、製品領域として①外皮用薬②リップクリーム③日焼け止め④機能性化粧品の4領域がある。中でも、2018年3月期の収益に大きく貢献した商品が「肌ラボ極潤プレミアム」や「オバジC酵素洗顔パウダー」などがある。また、日焼け止め「UVエッセンス」や「薬用シミ集中対策美容液」がインパウンド需要で増収に寄与した。

同社が化粧品事業に参入したのは、2001年に機能性化粧品「オバジ」を投入したのが最初。当時は、目薬市場が成熟市場になり伸び悩み始めたことから新たな収益源を確保するため、収益の高い化粧品事業に参入することを決断した。
化粧品市場を選択した理由として「外部環境の変化」と「経営資源とのシナジー」という2つの要因に起因する。
外部環境の変化は、2000年初頭に実施された薬事法改正がある。薬事法改正により化粧品業界は、それまで法律によって規制されていた製造の全行程をアウトソーシングできるようになった。
そのため、化粧品産業と比較的研究分野が近い医薬品企業など隣接市場に属する同社にとっては、化粧品市場参入への垣根が低くなり、参入が容易になった。同時に、外部環境の変化を追い風に自社のブランドイメージ、販路、研究開発といった自社の経営資源とのシナジーが見込める化粧品市場への進出を決断した。

同社にとって経営資源との相乗効果とは、具体的に製薬企業としてのブランドカである。化粧品を販売するにあたり、一般的な化粧品ではなく「機能性化粧品」という新たな切り口から製品をアピールできると判断した。
同社は、医薬品メーカーとして消費者から認知されているため、そのイメージをもとにして「機能性化粧品」をアピールし、参入時の差別化に繋げた。
さらに、同社が保有する流通チャネルも相乗効果として発揮できた。OTC事業に取り組む同社は、ドラッグストアをはじめとする流通チャネルを保持し機能性化粧品の販売でシナジー効果を発揮できると読んだ。
さらに、同社が保有する流通チャネルも相乗効果として大きい。OTC事業に取り組む同社にとって、ドラッグストアをはじめとする流通チャネルで機能性化粧品の販売で差別化が図れると踏んだ。

こうした一連の化粧品分野参入に伴い、具体的な戦略として2009年に同社初の取り組みとして百貨店チャネルに進出、直接カウンセリング販売を行った。また、通販事業にも注力し顧客とのダイレクトな関係づくりを強化、通販専用商品も開発し投入した。さらに、商品やブランドの魅力をより効果的に顧客に伝えるため、各商品のネーミングやパッケージ開発から広告活動、店頭での販促活動までを一体的にとらえたマーケティング活動を実施した。特に、顧客のライフスタイルや情報行動の変化に応えてメディアミックスをはじめ「SNS」や「Facebook」などのソーシャルメディアも積極的に活用するなど着実に成果をあげている。
こうした戦略が奏功して現在では、月間平均売上約100億円と驚異的な収益を実現するまでになった。

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