【連載】大手化粧品会社の研究(59)ロート製薬の会社研究 ~幹細胞研究を発毛研究に応用~(下)

2018.11.14

特集

編集部

ロート製薬は、再生医療研究で着目している幹細胞研究を発毛研究に応用し、研究成果としてミノキシジルが脂肪由来幹細胞からの発毛因子の遺伝子発現を高めることを実証試験で確認した。
実証試験では、脂肪の中にある幹細胞「脂肪由来間葉系幹細胞」に育毛剤に用いることにより毛細血管の血流を促進し、毛母細胞を活性化させるミノキシジルを添加し、24時間後の各因子の遺伝子発現量をリアルタイムPCR法(ÐNAなど特定の部位の増幅量をリアルタイムでモニター解析する方法)で測定した結果、ミノキシジルが脂肪由来間葉系幹細胞に働きかけ、毛の伸長に重要な「FGF7」(さまざまな細胞に対し増殖、分化などの活性を示す多機能性シグナル分子)や血管誘導に重要な血管内皮細胞増殖因子「VEGFA」及び発毛に重要な血小板由来成長因子「PDGFA」など発毛因子の発現を亢進することが明らかになった。

同社は、再生美容や機能性素材の探索をテーマに掲げて幹細胞研究を研究拠点「ロートリサーチビレッジ京都」において進めている。
これまでの研究成果として脂肪由来間葉系幹細胞が、真皮繊維芽細胞のヒアルロン酸やコラーゲン及びコラーゲンの分解を抑制する酵素「TIMPI」の産生を促進すること。また、真皮繊維芽細胞のコラーゲン繊維を形成することなどについて確認するなどの成果を出している。

それに続いて今度(2018年10月)、再生医療研究で着目している「幹細胞研究」を発毛研究に応用し、発毛研究で一般的な毛周期ではなく発毛に重要な脂肪層の「脂肪由来間葉系幹細胞」に着目した新しい発毛研究を実施した。その結果、世界で初めてミノキシジルが脂肪由来間葉系幹細胞からのFGF7などの発毛関連因子の遺伝子発現産生を高めることを発見した。

同社が発毛研究に取り組んだのは、2006年に一般的な「毛周期(ヘアサイクル)」の研究からスタートした。研究を進める中で、発毛には前駆脂肪細胞由来の成長因子が重要であるという知見や幹細胞が枯渇化することで毛包が消失するという知見が新たに発見されたことで、「毛球部」以外に着目した研究の重要性を認識。そこで、2013年から、成長期毛包にて毛髪が作られている毛球部が脂肪層に存在することから「脂肪由来間葉系幹細胞」に着目した発毛研究を進め、従来の毛周期に着目した研究とは一線を画した観点から研究開発に取り組んできた。

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