【連載】化粧特許と知的財産権④ホーユー、模倣品排除に補助金活用、花王と特許係争(下)

2019.05.28

特集

編集部

ホーユーは、これまで、中国からの模倣品横行、国内での特許権侵害などに見舞われるなど経営の屋台骨を揺るがす事態にしばしば遭遇してきた。
模倣品対策にあたって同社は、特許庁の「海外侵害対策補助金」を活用し、10年間にわたって中国での模倣品対策に取り組んだ。

成果の一例として中国やインドにおいて模倣品調査を実施。模倣品の90%を海外に輸出していた中国の製造業者を特定し、中国工商行政管理局(AIC)による摘発を実施。年間10~20社の摘発を行うなどの成果をあげた。模倣品対策を繰り返し行うことで、新たな模倣品の抑止につながった。
同社は「外国出願を積極化し、権利取得を目指すことで自社の技術やブランドを「守ることも重要。同時に、模倣品に対して強い姿勢をとることも重要」と説く。

特許庁の「海外侵害対策補助金制度」は、日本貿易振興機構(JETRO)を通じ、海外での中小企業等の様々な知財侵害リスクへの対策費用を助成し、海外での適時適切な権利行使の促進を図るもの。
海外での模倣品に関する調査から模倣品業者に対する警告・行政摘発手続きまでの費用を補助することで、模倣品対策を促進する。

こうした補助金活用による模倣品対策の取り組みに対する評価と合わせて、長く特許、商標、意匠など積極的な知的財産活動を行ってきたこと。さらに、主力製品である「ヘアカラー」の分野において常にトッ プクラスの特許出願件数と高い登録率が評価されたこと。また製品に於いても品質、性能、使いやすい容器など多数開発するなど知財活動の充実を図り、企業価値の一層の向上に努めていることが賞賛されて受賞につながった。

一方、模倣品対策と合わせて特許権の侵害問題にも直面する等辛苦をなめた。ホーユーは、製造・販売する泡状染毛剤「ビゲン ヘアカラーDX=クリーミーフォーム」が花王株式会社(東京都中央区)の保有する特許権(特許第4762362号 以下本件特許権)を侵害するとして2011年7月に花王が東京地裁に仮処分の申請をおこなった。
ホーユーは本件特許権には、無効理由があり、花王はホーユー製品に対し、その権利を行使できないとする一方、製品改良を行い、特許権を回避した改良製品を市場に投入した。
こうした中、2012年2月に改良前の旧製品に対し、花王の申し立てを認める仮処分の決定がなされたことからホーユーは、2011年9月に特許庁に対し、本件特許権に対する無効審判を請求。特許庁は2012年9月に本件特許権に対して無効であるとの審決を下した。その後、花王はこれを不服として知的財産高等裁判所に審決取消訴訟を提起した。しかし、両社は「紛争を長期化させることは、業界の健全な発展を阻害する」として2013年7月に和解が成立し決着した。

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