【連載】化粧特許と知的財産権⑰ナノキャリア、ミセル化ナノ粒子技術を医薬、化粧事業に活用(上)

2019.08.8

特集

編集部

ナノキャリア株式会社(千葉県柏市、東証マザーズ上場)は、ミセル化ナノ粒子技術(高分子ミセル)を特許等の知的財産として所有・活用し、ナノ粒子技術を搬送するデリバリーシステム(DDS)「ナノセスタ」として活用し、医薬、化粧品の両肺体制で事業に取り組んでいる。

「ミセル化ナノ粒子」技術は、東京大学と東京女子医科大学の研究グループらが静脈内投与した場合、血中に薬物が長時間滞留し、徐々にがん組織等の病変部へ集積する(EPR効果)ことで、治療効果が持続することを実証。
このミセル化ナノ粒子を実用化し、日本発の新しい創薬技術を世界に発信したいとの想いから、1996年6月に大学研究機関の発明者らが医療系ベンチャーのナノキャリアを設立した。

抗がん利用として開発したデリバリーシステム「ナノセスタ」は、水に溶けやすい親水部と油になじみ水に溶けにくい親油部が1つにくっついた高分子でできている。
いわば、生体適合性のポリエチレングリコール(水に溶ける親水性)とポリアミノ酸(水に溶けにくい疎水性)を分子レベルで結合させたブロックポリマー(共重合体)から構成される。
生体適合性のポリエチレングリコール(親水性)とポリアミノ酸(疎水性)を分子レベルで結合させたブロックポリマーは、水中で自己会合することによって外側が親水性ポリマーで内側が疎水性ポリマーという二層構造を有する直径数十ナノメートルの高分子ミセルを形成、効果的な成分を届けることができる。
このミセル化ナノ粒子を抗がん剤などの医薬品開発に応用し、静脈内投与した場合、血中に薬物が長時間滞留し、徐々にがん組織等の病変部へ集積する(EPR効果)ことで、治療効果を持続させることができる。

これを水の中に入れて攪拌すると高分子が絡み合い外側に親水部、内側に親油部が集まった状態のミセルになる。これによって水になじみやすい部分と油になじみやすい部分を別々に届けることができる。
このミセル化ナノ粒子を抗がん剤などの医薬品開発に応用し、静脈内投与した場合、血中に薬物が長時間滞留し、徐々にがん組織等の病変部へ集積する(EPR効果)ことで、治療効果を持続させることができる。

現在、同社は、ミセル化ナノ粒子技術を特許等の知的財産として所有し、ナノテクノロジーを応用した製造技術を基盤に創薬の研究開発を進め、事業化を行っている。
ミセル化ナノ粒子技術を応用した薬は
①薬物を血中に長時間滞留させ、効果を持続させることによる治療効果の増大
②より多くの薬剤をがん細胞に直接届けるため、正常組織へのダメージが少なく副作用を軽減できる
③利便性の改善や患者生活の質の向上
④医療費の削減等が期待されている。

同社の現状におけるビジネスモデルは、ミセル化ナノ粒子製造技術を基盤とした①自社開発 ②共同研究 ③ライセンスアウトの3パターン。
①の自社開発に関しては、臨床試験の段階までを手掛けた後、ライセンスアウトに以降し、契約一時金やマイルストン収入を得ている。

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