〇解説記事③マイクロプラスチックに揺れる化粧品容器 ~生分解性プラ使用の化粧容器等開発で世界をリード~(Ⅵ)

2019.09.12

特集

編集部

生分解性プラスチックの認定制度を通じて品質の確保が図られているが、期待の大きさの反面、普及についての進展は遅い。これは、現時点において価格面で従来のプラスチックに比べて高価であること、物性や成形性、性能について従来品を凌駕すると評価されるものが少ないこと、コンポスト施設の整備が遅れていることなどの理由による。

土壌、水に溶けるプラスチック原料とその原料を使った化粧容器・包装材等への使用が期待される生分解性プラスチックは、原料や製造方法によって微生物産生系・天然物系・化学合成系の3つに区分される。

この中で、化学合成系は、透明性や物理特性にすぐれているため、工業用材料としてさまざまな製造技術が開発され商品化されている。中でも、デンプンの発酵などによってつくられたL-乳酸を化学重合法で合成した高分子「ポリ乳酸(PLA)」は、各種樹脂とのアロイ(複数のポリマーを混合し、新しい特性を持たせた高分子)が、農業用シートやハウス用フィルム、食品トレイ、包装用フィルム、レジ袋などとして使用されている。

天然物系の中で、トウモロコシなどの穀類やジャガイモなどのイモ類に含まれるデンプン(グルコースポリマー)は、結晶性に乏しいため、単独ではプラスチックの性質がない。
このため、他の生分解性プラスチックとブレンドすることによってフィルムなどに製品化されている。また、デンプンに熱可塑性をもたせた変性デンプンプラスチックの原料に使われている。

そうした中で、生分解性プラスチックが化粧容器や包装材にとって代わるか、が焦点となっている。特に、生分解性の容器包装の機能、役割として素材の材質、形状、加工方法、化粧水、クリームなど内容物の保護、物流・搬送時の安全性などについてさらに研究開発することが求められている。

環境省は、生分解性プラスチックを使った製品開発の委託事業を始めているが遅々として進んでいない。国民もまた、生分解性プラスチックの存在すら知る人は少数派である。
海洋汚染や生態系に影響を及ぼすマイクロプラスチックから離脱していくためにも、生分解性プラスチックの普及啓もうについて業界、行政等が一体となって推し進める必要がある。と同時に、生分解性プラスチックを化粧容器、包装資材、什器等への商品開発を日本がいち早く実現することで、欧州などから環境後進国のレッテルを張られている日本の汚名返上にも繋がる。
(完)

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