【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目⑧ナノ粒子、酸化チタン微粒子等が綺麗を実現(上)

2020.03.2

特集

編集部

ナノ粒子の化粧品への応用が進展している。ナノ粒子は、物質をナノメートルのオーダー(100ナノメートル)の粒子にしたもの。 ナノ粒子は、比表面積が極めて大きいことや量子サイズ効果によって特有の物性を示すことなど一般的な大きさの固体(バルク)の材料とは異なることから化粧品や医療など様々な分野で研究開発が進められている。

これまでどちらかといえば化粧品は「厚ぼったく」一目見ただけで「化粧をしている」と分かるという印象が強かった。
しかし、ナノ粒子とその分散技術の登場によって今では、ナチュラルメイクが誕生している。肌に塗布した化粧品が膜となり、その中に含まれた微粒子(酸化チタン、酸化鉄)がシミなどを隠しながら光を散乱させ、白く綺麗に見せることを実現した。

酸化チタンは、紫外線を散乱させる散乱材としての働きを持つ。吸収と散乱によって肌を紫外線から守る。
ナノサイズ(A4用紙の厚さと同等以下)の粒子の大きさを上手く調整し、均一に分散させる困難を乗り越えて完成したのが現在普及している化粧品の原型といえる。更に、しわや毛穴をぼかして見え難くする「ソフトフォーカス効果」が登場した。これは、光を散乱しつつ透過もするという高度な技術といえる。

この技術を前進させたのがシリコーンゲルの微粒子だ。光をある程度透過しつつ散乱させて白く見せる。地肌のまま美しくしてくれる。ナチュラルメイクには、ファンデーションによる肌色の調整も重要。主にマイカ(雲母)の板状結晶の表面を酸化チタン粒子でコーティングしたものがパール顔料として使われている。
この顔料は、干渉光によって赤・青・緑・黄や金・銀などコーティングの厚さを調整することで多彩な色を出すことが出来る。
このように微粒子のコーティング厚を調整することが出来るようになり、メイクアップの技術は大 幅に進歩した。

ともあれ、微粒子(特にナノサイズ)は、凝集し易いため、均一に分散させるための様々な工夫が凝らされている。上手く分散していないと粒子の塊が発生し、白浮きなどの原因になる。また、分散のために界面活性剤や機械分散技術が活用されており、使用する物質によっては、水性成分と油性成分をエマルジョンにして均一にしている状況もみられる。さらに、クリーム状の化粧品を塗り易くするため、チキソトロピー性(力を加えることで、粘度が下がる現象)を持たせているものもある。

いずれにせよ、今日の化粧品は、ナノ粒子の化粧品への応用開発と工夫によって成り立っている「先端技術の塊」といえるだろう。

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