【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目⑧ナノ粒子、ルチル材など紫外線カットに使用(中)
2020.03.3
編集部
代表的なナノ粒子として酸化亜鉛ナノ粒子や酸化チタンナノ粒子が挙げられ、サンスクリーン剤として商品化され広く消費されている。
酸化チタンには、ルチルやアナターゼなどの結晶構造があるが、化粧品材料としてはルチルが主に使用されてきた。
ルチルは、アナターゼ等に比べて触媒活性が小さく紫外線の吸収波長も長波長側寄りで、より広い領域の紫外線をカットできるのが特徴。
粒子径が比較的大きなミクロン~サブミクロンサイズのルチル粒子は、表面散乱が大きいため、透明性が低下する半面、隠ぺい力が大きいため、下地を隠したい化粧品に使われる。逆に、粒子径がナノサイズのルチル粒子の場合、隠ぺい力が大きくない半面、可視光における透明性が増してくる。つまり、紫外線をカットしながら、下地の肌の色を自然に見せることが可能。
酸化亜鉛も酸化チタン同様、化粧品用途に広く用いられている材料だ。特に、サンスクリーン剤への応用が活発。
酸化チタンナノ粒子は光触媒活性があるため、酸化ケイ素などの活性の低い材料でコーティング処理するなど活性を減らす工夫がなされている。
酸化亜鉛は酸化チタン同様に紫外線を吸収するが、吸収波長はルチル以上に長波長側で、UV-Aの領域において高い紫外線カット性能を有する。このため、酸化チタンと組み合わせると、より広い紫外線領域をカバーすることができる。
酸化亜鉛のもうひとつの特徴は、酸化チタンよりも屈折率が低く散乱が小さいという点である。
そのため、同じ粒子径では酸化亜鉛のほうが高い透明性が得られる。ナノ粒子化した酸化亜鉛は、一次分散状態では透明性が高く透明感が要求される化粧品に応用されている。
企業のナノ粒子の応用研究として花王株式会社(東京都中央区)は、光の反射、散乱、浸透、吸収など光学的な制御を主な目的として研究開発に取り組んだ。
具体的な応用開発として
①パウダーファンデーション用光学制御粉体の開発(ナノ粒子の複合化)
②ナノ粒子分散による機能性向上など、化粧品を応用例としてナノ粒子の高次構造形成の解明を行った。
パウダーファンデーション用光学制御粉体の開発では、肌への付着性や伸び、化粧崩れ防止などの基本性能をはじめ美肌の再現などに力点を置いて研究開発に取り組んだ。
特に、光学制御粉体を開発するため、ナノ粒子を酸化チタンや硫化亜鉛、着色顔料などを板状に付着させた複合粉体を開発。また、潤い成分を寒天ゲルに内包した球状カプセルの製造技術、カプセルの化粧料を開発するなどして化粧品への応用を可能とした。