【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目⑮幹細胞培養液、ロート製薬が化粧品に配合(下)

2020.04.3

特集

編集部

ロート製薬株式会社(大阪府大阪市)は、売上高の7割以上がスキンケア製品で占めており、製薬メーカーから化粧品メーカーへと転身を図った。
そうした中、同社が現在、力を入れて取り組んでいるのが「再生医療」という最先端の医療技術。再生医療は、細胞や組織を用いて病気の治療を行うもの。

同社が再生医療に力を入れる理由には、再生医療に欠かせない「細胞を扱う技術」と「無菌製剤技術」を持っていることにある。いずれも、目薬やスキンケア製品の研究開発で培った礎が新規事業を支える基盤となっている。
特に、同社は「幹細胞」を用いた医薬品分野でトップランナーになることを目指し、中でも「脂肪由来間葉系幹細胞」(脂肪幹細胞)に着目した研究を行い、独自の成分「ステムSコンプレックス」などを開発している。また、ステムSコンプレックス配合の幹細胞コスメ「エビステーム」を販売するなど他社を凌駕している状況にある。

同社が幹細胞研究を行うにあたって注目したのが、特殊な環境下で育てて抽出した肌再生成分を高濃度に含む上澄み液「培養上清」だった。これを活用すれば、高いエイジングケア効果が期待できると考えた。選別した細胞を培養して上澄みを抽出。加工・精製して生まれた培養上清をコスメに配合し、幹細胞コスメを開発した。
脂肪幹細胞を用いた研究によって生まれた培養上清からなる成分のステムSコンプレックスは、エイジングケア効果が期待できる成長因子(グロースファクター)やペプチドなどが豊富に含まれていることから次世代のエイジングケアとして期待されている。また、脂肪幹細胞の強みの一つである「創傷場所にいって修復する」機能を更に高める能力があり、脂肪幹細胞を増やしてコラーゲンの生産性を高める機能を持つ。また、表皮のターンオーバーを促進する能力も持つほか「バイタライズコンプレックス」という成分なども含まれているため、肌の再生を促進する効果を持つ。

同社では、ステムSコンプレックスを配合した幹細胞コスメ「エピステーム」として化粧水やクリームなどを商品化した。今後、再生医療は確実に日本の主力産業になる。
将来の市場規模は日本国内だけで2050年には約2.5兆円と見込まれている。OTC 医薬品市場(約1.1兆円)と比較しても大きな可能性を秘めている。大学や研究機関だけでなく同社を筆頭とする企業が一様に事業化に乗り出すことで、次世代化粧原料としての需要拡大と確固たる地位を築こう。

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