【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目⑱リップケア技術、唇表面の保護と唇内部の保湿に力(上)

2020.04.23

特集

編集部

唇は皮膚に比べ、荒れやすい部位であるため、荒れた唇に対しては適切なケアを施す必要がある。現在、唇のケア方法は、唇表面の保護と唇内部の保湿効果を高めることの2通りの方法がとられている。

唇は、皮膚のような天然の保護膜がないことや角層が薄いことから、外部からの刺激を受けやすく水分が蒸散しやすいため、唇表面を保護することが重要である。
唇表面を保護方法としては、油分を唇に与えるリップクリームや口紅などの油分によって水分蒸散を遮断する方法がとられている。
これらの方法は、唇にうるおいを与えると同時に、冷たく乾燥した外気から唇を保護する役割を果たしている。また、メラニン色素が少ない唇は、紫外線に対する防御が弱く乾燥しやすいため、紫外線量が多い季節、レジャーなどでは、紫外線防御力をもったリップ化粧品が使用されている。

唇内部の保湿効果を高める方法として最近、乾燥を防ぐ目的で保湿性、吸湿性に優れた油性基剤の開発や水系の保湿剤配合技術の高まりに伴い、トリートメント性を高めたリップ化粧品が開発されている。また、荒れている唇は、角層の落屑(らくせつ)がうまく調節されていないという報告があり 落屑(らくせつ)調節にアプローチしたケア方法を活用する動きがみられる。

唇の主な悩みとして「乾燥・皮むけ」でこれまで、唇の角層機能や皮膚との違いなどの研究が盛んに行なわれている。
一方、この「乾燥・皮むけ」悩みは30代をピークに減少し、年代とともに唇の色がくすんで見える半面、ふっくら感がない形状や輪郭がぼやけるなどの悩みが増えている。

従来、口紅、リップクリーム、リップグロス、リップペンシル等の口唇用化粧料として油性タイプのものが知られているが、これは液状油分(例えば、ヒマシ油、ホホバ油、スクワラン等)とワックスとの混合物に粉体を分散したもの。
近年、口紅塗布時のツヤが強く求められるようになり、その実現のために、ポリブテンなどの高粘度液状油が使用されてきた。しかしながら、高粘度液状油を高配合したものでは、経時で色落ちしてしまい、化粧持ちが悪いという問題点があった。塗布時のツヤと化粧持ちの両方に優れた口唇用化粧料は、市場の長年の要望があり、多くの研究者による開発努力がなされている。

例えば、各種シリコーンや非水系ポリマー等を被膜形成成分として用いた口紅が提案されている。またペースト状油分として精製したワセリンを使用することで、のびがよくべたつき感の少ないリップクリームも技術開発されている。 被膜形成成分を配合した口紅は、つやとか化粧持ちの点である程度の機能を有している。しかし、原料の被膜形成成分に起因する口唇上での被膜感を生じてしまうため、使用感触の点で問題がある。一方で、被膜形成成分の配合量を減らした場合には、口唇上の被膜感は良好であるものの、化粧持ちの向上効果が十分に得られず、両者の機能を同時に満たすことは非常に難しい問題をかかえている。またペースト状油分としてワセリンを高配合すると、塗布時のツヤが損なわれるという問題も指摘されている。

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