【連載】大手化粧品会社の研究(53)再春館製薬所の会社研究 ~中計最終総売上370億円、ドモホルン売上比率90%と安定~(中)

2018.10.4

特集

編集部

再春館製薬所は、2016年度(2017年3月期)を初年度に2020年度(2022年3月期)までの中期5ヵ年営計画(中計)を策定し、取り組んでいる。
同社を含め、昨年9月に業務を開始したコールセンター業務を行う株式会社ヒューマンリレーション(福岡県福岡市)やセキュリティサービスの再春館システム株式会社(東京都港区)など6社でグループを形成。
こうした中、年々、事業構造が複雑化し、新たな経営体制の確立に迫られたことから、5ヵ年計画を策定し、組織再編と人材の育成強化とした成長基盤の再構築を図ることにした。

5ヵ年計画に基づく組織再編では、グループ全体の事業を統括する「グループ経営本部」を設置し内部統制を強化。異なる部署が行っていた「採用」「研修」業務も経営企画本部に一本化した。また、人材・職域の流動性を高め、各部署への権限移譲など経営判断や結果責任を増やすことで、成長の機会を創出する。
特に、中期計画では、成長のけん引役を「グループ各社」と「海外」に求める。一方「ドモホルンリンクル」については、事業の”安定化”を図ることにした。

同社は、これまでもテレビCMや電話主体のコミュニケーションを強みにしてきた。しかし、Webやスマホの普及で新規獲得は厳しさを増している。ドモンホルンリンクルの無料サンプル請求は、年間約25万件で推移。約2割(約5万人)程度が初回に購入するなどリピート率向上による成長をたどってきた。現在、Webの活用で請求数は30万件前後にまで伸びるなど、投資効率は依然として高い。だが、同社では「初回引き上げ率は数%低下するなど、かつてのビジネスモデルのままで成長を図ることは難しくなっている」という。「その意味で、ドモンホルンリンクルの安定化は何よりも優先課題」と説く。

安定化で必要になるのがコミュニケーションの深化。顧客との間で「電話」による接点が希少になる中、事業の安定化を図ろうとすると従来の電話、テレビだけでなくWebや店舗などリアルなコミュニケーションを深化させていく必然性が生じる。メールやチャットを活用して電話同様のサービスや品質確立を目指すことが喫緊の課題となっている。
同社は、すでにリアルな接点の場として、直接販売を行わずに化粧品体験や注文受付に限定した店舗展開も推進している。今後、全国主要都市に化粧品体験や注文受付に限定した店舗を展開していく計画。

もう一方の強化策、ドモンホルンリンクルの海外展開については、2012年に進出した台湾と今年6月に進出したタイに期待する。商品の配送コストがかさむものの、商品注文や顧客対応を熊本本社で受付け、国内同様の「商品品質」を維持するモデルで展開している。外国語に対応したWebサイトも立ち上げ、越境ECの展開で顧客は世界23ヵ国前後に広がっている。

こうした取り組みで、5ヵ年計画の最終年度2022年3月期の総売上高は370億円、このうちドモホルンリンクルの売上比率は、現在の90%と変わらず引き続き安定して推移する見通し。

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