日やけ止めの塗布状態を「見える化」 より高機能な日焼け止め開発に期待
2021.08.4
編集部
株式会社コーセー(東京都中央区/代表取締役社長:小林 一俊)は7月20日、浜松ホトニクス株式会社(静岡県浜松市/代表取締役社長:晝馬 明)との共同研究で、「貫通孔ポーラスアルミナ薄膜DIUTHAMER」を用いた「イメージング質量分析法」により、肌上の日やけ止め塗布膜に含まれる成分を一括でマッピングする技術を開発したと発表した。
この技術により、例えば塗布膜に存在する紫外線吸収剤の偏りや、成分同士の位置関係、成分ごとの落ち方の違いなどを視覚的に解析できるようになるという。
日やけ止め塗布膜を評価するときには、肌上での状態を保ったまま塗布膜を採取することが求められるが、従来手法には「処理が煩雑で塗布膜の状態が崩れてしまう」「肌成分まで採取されてしまう」など多くの問題があった。
そこで両社は、肌上に乗せるだけで日やけ止め塗布膜のみを採取することが可能であり、複雑な処理を全く必要としないツール「貫通孔ポーラスアルミナ薄膜DIUTHAMER」に着目した。
今回、この採取方法とイメージング質量分析技術を組み合わせることで、複数の成分の量や存在場所を一括評価することに成功した(図1)。
これにより、紫外線吸収剤の中でも油性成分と水性成分が異なる場所に分布することで塗布膜全体として効果的な紫外線防御を実現していることなどが判明した。
次に両社は、同技術を用いて、使用シーンごとの塗布膜状態を観察した。
まず、試験用の日やけ止めを腕に塗布し、日差しの強い環境下にて活動後、塗布膜に含まれる紫外線吸収剤の状態変化を評価した(図2)。
その結果、時間が経つにつれて特に水性の紫外線吸収剤が落ちていく (図中の黒色部分が増えていく) 様子が観察された。
さらにランニングで汗をかいた後の塗布膜を同じように評価したところ、同様の傾向がより顕著に観察された。
両社はこの結果から「『汗をかいて日やけ止めが落ちた』と一口にいっても、配合成分ごとに落ちるスピードや量には違いがあり、本技術が汗で落ちづらい成分や製剤の設計に有効であることが示唆された」と結論づけた。
さらに今後の展望についてコーセーは、「肌上の日やけ止め塗布膜における成分分布を視覚的に解析できるようになるため、塗布膜の紫外線吸収剤の分布に着目した処方設計や評価など、より高機能な日やけ止め開発を行うことが可能となります」と語った。
なお、貫通孔ポーラスアルミナ薄膜DIUTHAMERとは、浜松ホトニクス株式会社製の酸化アルミニウム薄膜「Desorption Ionization Using Through Hole Alumina MEmbrane」の略名。
イメージング質量分析法とは、成分ごとに、質量に基づいて対象試料に含まれる種類や量を測定する技術。一定の区切られた領域ごとに分析を行うことによって、各成分の存在場所を可視化することができる。