【連載】化粧品各社のイノベーション研究【20】ウテナ③ ~ウテナ芸術・文化面のCSR活動展開、待たれる中長期戦略~
2016.04.13
編集部
企業の環境(Environment)や社会(Social)、企業統治(Governance)に基づいて投資するESG投資が世界的に広がる中で、ウテナはステークホルダーとの関わりを重視した社会貢献活動(CSR)の一環として、日本の伝統芸能である歌舞伎の化粧用下地(写真)を歌舞伎役者と共同で開発している。
歌舞伎の白塗りの化粧下地には、古くから鬢付け油が使用されている。鬢付け油は、棒状の固形タイプが一般的。肌にしっかりなじませるには、ヘラなどでちぎったかけらを手のひらでよく温めてからゆっくりとのばしていくというステップが必要。
そのため、歌舞伎役者から化粧用下地について「のびが良く薄付きでどんなに汗をかいても化粧が崩れないもの」という要望が出された。
同社は、これに応えて幾度となくサンプル品を作っては、肌に塗るなどのテストを重ねた結果、歌舞伎役者にとって「化粧の練りが良く肌にフィットする」など、納得のいく化粧用下地を完成させた。
この歌舞伎の化粧用下地開発と合わせて、特別養護老人ホームでのメーキャップサービスや交響楽団への冠協賛もCSR活動として展開している。
こうした未公開企業でありながらステークホルダーとの関わりを重視した社会貢献活動に取り組む企業姿勢には、企業の規模に関わらず多くの中小企業にとって共鳴するところが大きい。引き続き、どのような社会貢献活動を打ち出して取り組んで行くか、注目されるところだ。
同社は未公開企業だが、業績を公開している。2016年2月期の売上高は69億円にのぼる。事業規模は、中堅企業の規模にあるといえるだろう。
しかし、創業90年を迎えるにあたって、中長期目標、経営目標が見えない。
国内においては、少子高齢化や消費構造が大きく変化している。中期的に東京オリンピックをトリガーに需要の回帰が期待できるが、先行きの取り巻く環境を見据えた国内戦略が必要だ。また、東南アジア中心に展開している海外事業においても、現地の代理店活用による販売面での深耕策や現地法人による拠点化など海外事業の構図を描く必要がある。
ともあれ、ウテナのブランド力を事業成長の糧としながら今後、どのようなイノベーションの波を起こして目標に立ち向かい、事業をさらに成長軌道に乗せて行くのか、具体的な成長に向けた戦略・戦術が待たれる。