美容各社が取り組む「ダイバーシティ経営」(下)

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2013.12.20

編集部

国際化やグローバル化の進展に伴い、女性や外国人などの人材活用「ダイバーシティ」を促進し、ダイバーシティ経営の効果を上げるためには、働く環境を整備して仕事と生活の調和を図るワークライフバランス(WLB)が必要不可欠。WLBを促進するためには、経営トップの強いリーダーシップをはじめ専任組織の設置や女性の能力発揮を図るための人事・労務制度、職務の成果評価などを体系化することが重要となる。

経団連が東京経営者協会の会員1,889社を対象に行った「2012年人事・労務に関するトップマネジメント調査」の中で、WLBに取り組んでいる578社を集計したところ育児・介護休業制度の充実が75.6%と最も多く所定外労働時間の削減75%、社員の自己啓発・支援の実施65.7%という結果が得られた。また、新たに導入を検討している施策として「仕事の進め方の見直し」「職場復帰支援」がともに55.8%と上位を占めた。

こうしたWLBの実態調査と合わせて66社のWLB取り組み事例を取りまとめた。この事例の中で美容関連では、味の素とアルテサロンHDのWLB取り組みが紹介されている。

味の素は、WLB向上の取り組みとして「労働時間」、「休暇取得」、「職場運営改善」「自立・ライフプラン」の4つのテーマを掲げ具体的な施策を設定して取り組みを行なった。この中で労働時間の感度を高めるために「働き方計画表」の活用による社員の労働時間感度アップや有給休暇取得の計画化実践などに取り組んだ結果、2012 年上期の残業時間が減少(前年比98%)、有休取得日数が増加(前年差2.5 日)するなどの成果が得られた。

アルテサロンHDの従業員に対するWLBの取り組みは、柔軟で多様性のある就労機会の提供と効率的な店舗運営を狙いに施策を設定。就労面では、本人の希望を踏まえてライフステージに沿った職種の転換や再雇用、産休後の職場復帰などに取り組んでいる。こうしたWLB取り組みの結果、2012年の実績として社員からパートなどの雇用形態変更5 名。再入社10 名などの実績を上げた。

理美容業界においては、徒弟制度的な慣行の下で、長時間労働や深夜までの技術習得など従業員の生活の質と相反する就業環境が依然、根強く残る。同社のWLB実践は、店舗での技術習得の改善と合わせて多くの示唆に富む動きとして注目される。

ともあれ、企業の経営効果に繋げるダイバーシティとダイバー推進策の取り組みは、徐々に中小企業にも広がりを見せてきた。しかし、多くの女性が従事し、中小企業が乱立する美容業界に限っては、一部の事例企業を除いて遅々として進んでいないのが実態だ。

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