ココア1杯で記憶力改善」の論文が検討された
2014.10.30
国際部
ココアの認知機能改善効果についての研究が10月26日、「Nature Neuroscience」オンライン版に掲載された。これは。健康な成人(50-69歳)にココアを多量に含んだ食事を続けてもらい。3か月後に脳の中で記憶を司るといわれる海馬を形成する歯状回(Dentate Gyrus:DG)の活動を、fMRIによる脳スキャンで計測したもの。その結果、fMRIで測定したDGの機能促進および認知機能評価で機能促進が観察された。
この論文発表の翌日、英国の「Independent」紙上で「高齢者にカップ1杯のココアで認知機能が30-40代になる」という見出しの記事を掲載。論文の著者の1人である米国コロンビア大学のScott A Small博士へのインタビューによれば「研究の開始時には一般的な60歳の記憶能力を持っていたとすれば、3か月には30-40歳の記憶力を持っていることになる」という。
この記事を受けて即日、英国の国営保健サービス(NHS)は同機関のサイトに、「カップ1杯のココアは認知機能改善の治療法ではない」という記事を掲載した。「ココアパウダーを買いにスーパーマーケットに走る前に、事実はこの見出しより相当弱いということを考えるために立ち止まった方がいい」という言葉ではじまるこの記事は、もともとの論文が特別に調整されたフラボノールが多いココア飲料での試験であること。試験の結果が認知機能に関係する脳の部位の活動が高まったことを示したが、これが日常生活での認知機能改善につながるかどうかまでは不明であることなどをあげ、食事内容に気を使うことで認知機能の低下や認知症からの回復につながるという考え方は魅力的だが、まだ証明はされていない」とした。
NHSは英国の国費でまかなわれている国営の医療サービスで原則無料で診療が受けられるシステム。多くの医療情報が、マスコミによってセンセーショナルに報道される中、公的組織の医療担当専門家が報道をチェックし意見を公表することは、健康情報に敏感な一般市民の過剰な反応を抑える効果があるのかもしれない。